アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2
-
『…ごめん、』
ほら、聞こえる。
『…ごめんなさい、』
雨の音に
紛れるように、
『だけど、さよなら。』
俺の手を離した、あいつの声が。
*
"ごめん"を繰り返すあいつを、
俺は呆然と見つめていた。
"あぁ、終わった。"
ただそれだけを、思った。
"さよなら"は、雨上がり。
あいつの"愛してた"は、晴天の空気に消えて。
それなのにどうして、
雨の音とともに思い出すのだろう。
-なあ、
『、
…ごめんなさい、
さよなら。』
俺の呼びかけにも振り向かず、
あいつは雨上がりの空の下を歩いて行った。
残されたのは俺ひとり分の涙と、雨に散った桜
…心の中は、どしゃ降り。
-うそ、だろ…
あいつと過ごした日々を、雨の中の逢い引きを、
思い出そうとしても頭が回らない。
そのくせぼたぼたと落ちる涙の粒は、止まることを知らず。
濡れた傘がベンチに残されていて、
…あいつの手から離された俺たちは、
一体どうすればいいのだろうか。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
25 / 27