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"まただんまりかよ…。"
-…。
"いいや。今日は帰るわ。"
彼はそう言って、玄関の方に歩いていく。
"あ、そうだ。"
-…何。
"あいつ。"
-……あいつ?
"お前の昔の恋人。"
-……。
"ほら、初めて好きになったとかなんとか。"
-……あぁ。
"あいつさ、
この前恋人らしきやつと歩いてんの見たんだわ。"
-……………そうか。
思った以上に、声が掠れた。
そんな俺を振り返らず、彼はドアから出ていく。
"お前も次にいけよ。"
最後の言葉は、彼が全てを悟っていたことを示していて。
-…だから、"次"はねえんだよ。
俺の呟きは、湿った空気にじんわり溶けていった。
ザーーー…
雨音。
『雨はすき。
だって君と近いから。』
あいつの隣は、もう俺じゃない誰かがいる。
その事実に、ぐらりと視界が揺れるのがわかった。
雨音が、遠い。
そしてまた、
季節は俺を置いていく。
おわり。
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