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僕の彼
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「やっと見つけた、どうして俺の前からあの時姿消したの...?」
4月。大学2年になった僕は友人たちと一緒に飲み会に行っていた。僕はごく普通の、どこにでもいる大学生だ。彼女もいなければ、友達も少ない。そんな僕が飲み会の帰り、1人きりになった時、絵に描いたような"イケメン"ってやつに声をかけられた。
「え?」
見覚えがない。酔いも入った僕は素っ頓狂な声をあげて相手の顔を見る。
少し色を抜いたであろう明るい茶髪に、切れ長の瞳。鼻筋は通っていて、身長も僕よりずっと高かった。
そんな男に僕は手を握られ、顎をつい、と持ち上げられていた。
「俺ずっと探して探して、やっと見つけたんだよ。今度はちゃーんと側にいるからね」
彼が酔ったような口ぶりで呟き、僕の肩を抱く。ひぃ、と小さく声をあげると彼が抱きしめたまま僕の後頭部を撫でた。
「あ、あの、人違いじゃないですか.....」
驚きながら僕は相手に声をかける。本能的に危ない人なんじゃないかと思ったから、軽く肩口を推して身体を離す。
「人違いなわけないでしょ?こんな可愛くて大好きな人の顔間違えないから。....もしかして、馨さん、俺のこと覚えてないの?」
彼の言葉に僕は再び目を瞬かせた。彼はしっかり僕の名前を呼んだ。と言うことは僕のことをしっかり認識していると言うことだ。
「...すみません、どなたですか?」
素直に謝ったほうがいいと思って、僕は相手から距離を取りつつ頭を下げた。ちらりと上目遣いで相手を伺う。少し悲しそうな顔をしていたのが心苦しかった。
「まぁ俺も高校の時から随分変わったからしょうがないか〜。俺です、馨さん。美波朔です」
あ、まずい。その名前を聞いて、ぞくりと背中が粟立つのを感じる。
高校の時とは随分印象の違った彼に僕が気付くはずはなかった。それよりも、僕は彼に後ろめたい事がある。顔を見られなくなった。
「あ、久しぶり、元気そうでよかった、じゃあまたね」
早口でそう言って僕は相手に背を向けて逃げようとした。
しかし彼が僕の腕を引いて抱きしめる方が早かった。
「もう逃がさないよ馨さん。逃げようとしても絶対手放さないから。俺の家近いんだ、行こ?」
よく聞けば、懐かしい声だった。耳元で低く囁かれると僕の身体が熱を帯びるのを感じる。これだけはあの時から変わってない、彼の魔法の声で僕は朔に逆らえなくなる。
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