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束縛ー2ー
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「…くん、 …とくん、悠斗くん、 先生だよ。ね?大丈夫だから」
耳を塞いでいた手をどけ、顔を上げると、いつもの先生がいた。
心配そうに僕を見てくれるけど、
心の中では、絶対面倒くさい奴だって思ってる。
だって瞳の奥がスッゴく暗いから。
「…ごめんなさい…先生」
迷惑かけて。
お仕事増やして…
「1人にしてごめんね、寂しかったかな…? あぁ、でもまだ会議終わんないしな…」
「…ぃよ。 僕、1人で大丈夫。 勉強、してる…から」
鞄から、はる兄に買ってもらった数学のドリルを出して机に広げた。
一応学校には来ているけど、ちゃんと授業は受けていないから…
この前は理科で、今は、数学。
「じゃあ先生は会議戻るから、何かあったら会議室来れる?」
「うん…」
小数×小数とか、難しい計算をしていると、
変なこと考えずに済むからけっこう楽。
いつの間にか昨日の出来事も、そのことで震えていたことも忘れて、
無我夢中で机に向かっていた。
「失礼しまーす」
少し高めの明るい声がこの部屋に響きわたる。
まだ声変わりしてないのかな?
無駄にそんなことを思う。
まぁまだ僕もしてないけど…
「あれ?先生居ないの? …って誰か居る?」
彼は足音を立てながら僕の近くに来て、
僕と彼との隔たりを開放する。
「ちょっとさ、体温計どこにあるか知らない?」
「…えっと、 えっと…、、 そこです…」
人と離すつもりはなかったんだけど、早く帰ってほしいから。
僕に近づいてほしくないから…
「ありがとね、君… えっと、名前なんて言うの?」
「…名前、あの… 橘です。 橘 悠斗」
目を見つめられるとドキドキしたから、
勉強道具に目を移し、机の下で手遊びをしていた。
「ああ! 俺同じクラスだよ。同じクラスの蒼(あおい)。よろしくな」
同じクラスの人…
最悪だ。
傷を見られたことがあるから。
僕の傷を笑った人たちだから…
「悠斗、スッゴい真面目じゃん。 俺、サボろうと思ってここ来たのに、さ?」
「サボる?」
「いや、ちょっと熱っぽいのはあるんだけどさ…あぁ、ここ、今、上でやってたやつだ」
上っていうのは、教室のこと。
僕は行かないから“上”には上がらないけど、一年生だから階段大変みたい…
「熱、大丈夫…ですか?」
「うん、全然平気。 ってか真面目だと思ってたら、耳にこんなのつけてんじゃん」
「…駄目! あっ…ごめんなさい」
ピアスに一瞬触れられて、僕は蒼くんの手を振り払ってしまった。
あぁ、面倒くさい奴ってまた思われちゃう。
嫌な奴だ。って…
「いや、こっちこそごめんな。 似合ってるよ、悠斗」
蒼くんは、ニッと白い歯を見ながらベッドにダイブする。
いつもなら、知らない人が隣に居るって凄くいやだけど(クラスメートなら尚更)、
蒼くんならなぜか嫌じゃなかった。
なんでだろ。
それから、先生の会議が終わるまで蒼くんとお話しした。
といっても、蒼くんの話をただずっと聴いてるだけだったけど…
「…酷いんだぜ、先輩って。 平気な顔でコーラ買ってこいとか、俺のことパシるしさ。
だから昨日は思いっきり振って渡してやったよ」
「えー!大丈夫だったの?」
「ううん、全然。 怒鳴られたし、俺だけずっと階段ダッシュ。 はぁ、大変だったよ」
大袈裟に手振りとかをつけながら、面白おかしく話してくれる内容に、
僕はずっと笑ってばかりだった。
久しぶりにこんなに笑った。
そう言えば、いつの間にか敬語もとれてたし…
あぁ、楽しいな。
学校って楽しいかも。
友達っていいかも。
なんか、よく分かんない。
『楽しい』って何だっけ?
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