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すれ違い
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まだ夕方だというのに、
カーテンでも閉め切っているのか、真っ暗な部屋。
鼻につく血の匂い。
電気のスイッチを探し、部屋が明るくなると、
そこに居たのは、
左の手首から血を流し、倒れている赤羽だった。
俺はすぐに駆け寄り、
肩を軽く叩いた。
「赤羽!!、俺だけど分かるか?」
「…っ…先、せ…ぃ?」
焦点の合わない瞳をぼんやりと覗かせる赤羽の頭を、
不本意ながら
安心させるために撫で、
その辺にあったタオルで手首をキツく縛る。
しばらくして、蒼白だった顔にもほのかにピンクが戻り、
瞳の焦点もあってきたようだ。
傷がそんなに深く無かったのが幸いした。
「赤羽、起き上がれるか?」
「…先生、ごめんなさい」
手首に巻かれたタオルを見つめる赤羽の身体を起こして、
俺に寄りかからせる。
「どうしてこんなことしたか言える、かな…?」
「……怖い。 怖かったの。 でも安心できたから」
「痛くない?」
「痛い。でも、安心できる。 痛いから安心できた」
いきなりタオルを取ろうとする赤羽に、
「駄目だ」と言ってその手を掴んだ。
「赤羽、いつからこの状態? ご飯はいつ食べた?」
「…ごめんなさい」
「別に俺はせめてないんだよ?」
「…ごめんなさい」
赤羽は意味も無く「ごめんなさい」と言い続けながら、
完全に俯いてしまった。
ーーー
赤羽には、タオルを巻いていない腕にも、
沢山の傷痕が残っている…
その傷痕を見ないようにと、
高橋は机の上のカッターに目を向けた。
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