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遥
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それから一年。
高校は適当に単位とって卒業した。
そのまますんなり就職も決まり、
この家に居なくたって良くなった。
少しとわのことが気がかりではあるが、
はやく悠斗と暮らしたい。
それに早く出たい。
この家から。
「とわくん、俺仕事行くからな」
「…ゲホゲホっいや。行かないでよ」
「仕事だから。ごめんな」
「うん…」
最近ずっと具合が悪いらしく、
焦点の定まっていない瞳で毎日俺を引き止める。
でも、、、
仕事だし…
仕事が終われば、速攻で家…ではなく悠斗のもとへ。
『遥さん』なんてよそよそしい呼び方は自然と
『はる兄』に変わって、だから俺も『悠くん』に。
とわくんの写真を見せれば「仲良く出来るかなぁ?」なんて、可愛い。
「あと少しだからな。
もう少しで一緒に暮らせるから」
毎日呪文のように唱えて、家に帰る。
本当にあと少し。
アパートさえ借りれれば…
2人っきりになれる。
「ただいま」
電気の付いてないリビングを抜けてとわの部屋に行くと、
中から異常な咳が聞こえた。
俺が行ってからずっとだとしたらかなり辛いだろう…
「おいとわくん?大丈夫か?」
「…ゲホっ…お兄ちゃん?ゲホゲホゴホっ…」
「喋るな。発作はおきてないだろ?リビング行くか」
一応心配だから、目の届くリビングに連れて行く。
暗いリビングは怖いようで、ずっと俺にしがみついていた。
「なぁ悠くん…あっとわ、水飲むか?」
「…いらない」
とっさに言い直したけど、
流石に名前を間違えるなんて、可哀想だった。
「ごめんごめん。もう寝るか」
「…ん」
それでも、リズム良く叩いてあげると、
気持ち良さそうに夢の中に入っていく。
「…お兄ちゃん、好きぃ…」
「とわくん? あぁ、寝言か」
寝言でも俺の名を呼ぶ弟。
頬が無意識に綻ぶ。
何でだろ。
こいつ、
なんか
可愛いかも。
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