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遥
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とわの頭を撫でていると、洋服の裾をツンツンと引っ張られた。
振り向くと、申し訳なさそうに下を向く悠斗の姿があった。
まぁここは病室だし、医者はそんな事しないから、
悠斗以外あり得ないんだけど…
「ん?どした?トイレか?」
「…うん。ごめん」
俺が声をかけると、ますます申し訳なさそうに縮まった。
「謝んなくていいから。トイレだろ?行こうか」
「あ…りがと…ぅ」
「そうだよ。『ごめんね』じゃなくて『ありがとう』な?」
「うん。ありがと…ぅ」
とわが眠っている間に分かったこと。
悠斗は、俺以上に『孤独』が苦手。
何をするにも俺から離れない。
それは俺にとって嬉しいことでもあるけど…
***
ここからは全て聞いた話。
悠斗をここまで追い込んだのは、
悠斗の父親、つまり俺の父親。
そして、ひまわり孤児院の施設長だった。
悠斗の両親は、初め悠斗を可愛がっていたらしい。
しかし、両親同士のケンカが絶えずに離婚。
その後父親の方が引き取ったが、お酒に溺れ、ネグレスト。
父親は家に寄り付かず、衰弱しきったところを、アパートの大家さんが見つけて、
この前までいた、『ひまわり孤児院』に預けられた。
しかし、そこの施設長はいわゆる『男色家』で…
幼いながらも可憐で綺麗だった悠斗は、恰好の餌食になった。
いくら無知な悠斗も、嫌で泣いて…
そのたびに「うるさい」と殴られた。
施設長は、小さな悠斗に暴行を加えながら、
尚も泣く悠斗に、無理やり挿入し続けた。
それから、心も身体も気づいた悠斗に施設長が言った一言は
『汚い』
自分で傷つけたのに、そう言い放ち、悠斗を手放した。
綺麗じゃない君はいらない。と…
それから犯されることは無くなったが、他人を怖がるようになった悠斗は同年代の子と馴染めず、のけものにされ、悠斗には消えない傷と痛む傷、
そして『孤独』だけが残った。
幼かったからか、脳が忘れたいと思ったからかはわからないが、
犯されたという事実は忘れ、理由のはっきりしない傷と、何故か極度に他人を避ける体に疑問を持ちながらも、孤独は嫌で…
中でも男の人は苦手なようだけど、
なぜか、俺だけは避けなかった。らしい…
それから俺は“何も知らないまま”悠斗を弟としてあの施設から引き取った。
ただ、引き取ってから悠斗の怪我に気づいた俺は、
当然施設に乗り込み、理由を問いただした。
そこで初めて、「黙っていてすいませんでした」と。
施設長がみんな怖かったって泣いていた。
別に悠斗を手放す気はないが、極度に他人を怖がって、
極度に俺から離れない理由がわかった。
でもそれだけだ。
その後、母親は知らない男と事故で死んだ。
俺が「何も知らない、分からない」そう答えると、
警察が事故の処理やら葬式など、全部を済ませてくれた。
もちろん俺らはその間、とわのもとに居たのだが…
***
悠斗が忘れているなら、訴えたりして思いださせるのも嫌だから
訴えたりはしない。
が、
もう一生許さない。
もちろん許す気もさらさら無いが…
あぁ、
とわも俺に対してそう言う気持ちなのだろうか。
だから起きたくないのだろうか…
本当に、人の気持ちなんてわかんない。
弟の気持ちなんかもっと。
だから教えてよ。
起きて自分勝手な俺を怒ってよ。
とわくん。
起きて、本当に…さ。
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