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遥ー2ー
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「遥くん、本当?握ってくれたの?」
「握ってくれた。なぁとわくん」
俺が笑顔でとわの頭を撫でると、とわは目をぎゅっと瞑ったあと、ゆっくりと瞼を持ち上げた。
半年ぶりに見るとわの瞳は綺麗で。透き通っていて。
美しかった。
「とわくん、頑張ったな。本当にありがとう」
俺はとわの手を握ったまま崩れ落ちた。
そして、そのまま誰の目を気にすることもせず、嗚咽をもらして泣きじゃくった。
落ち着いてから立ち上がり、とわとを見ると、もう目を閉じていた。
「えっおい…」
「大丈夫だよ。まだぼーっとしてたみたいで寝かせただけだから…」
「あぁ…」
「本当に良かったね、とわくん起きてくれて。本当に良かった」
そう言った主治医の頬には透明な涙が伝っていて、
美しいと思った。
真珠みたいだと思った。
その後、主治医は俺の頭をくしゃくしゃと撫でて、病室を出て行った。
不思議と俺はその手を払う気はおきず、
しばらくの間、優しい温もりに包まれた。
「…んぁ…お兄…ちゃん」
「とわくん、もう寝過ぎだよ…でも起きてくれて良かった。本当に心配したんだよ?」
「ごめん、お兄ちゃん」
「あぁとわくんが謝らなくていいんだよ。悪いのは俺で…
あのさ、ちゃんと聞いてほしい。とわくんに言わないといけないことがあって…」
言いたいことがまとまらなくて、
ごちゃごちゃと言葉を並べてしまった。
でも、本当に…
謝らないと。
俺が悪かったってちゃんと。
「はる兄、あの…」
「えっ?誰?お兄ちゃん?言いたいことって…やだよ、やだ」
「違う。これもだけど違うんだって」
「何?僕、いらない?もう2人じゃないの?や…はぁっ…はぁっ…っあ」
「違う、俺は…」
「遥くん、とわくん起きたら伝えてって言ったじゃん。
とわくん、大丈夫だから落ち着いて…ね、大丈夫だよ」
「あぁ…ごめん。本当、とわくん…ごめん」
俺はまたとわを苦しめてしまった。
焦って周りが見えなくなって…
「遥くん、外出てて」
あぁ、俺はダメな兄貴だ…
「ごめんねはる兄…僕が話しかけたから…」
「ううん。はる兄が悪かったから…悠くんは謝らなくていいんだよ…ね?」
「ごめん…」
「遥くん、本当に何考えてたの?今回は発作まておきなかったけど、
喋れる状態じゃないって分からないの?」
「すいません」
「一週間は絶対安静。何を話したかったか分からないけど、しばらくは禁止だからね。
わかった?」
「はい。すいません…」
「先生、僕。僕が悪かったの。はる兄を怒らないで」
悠斗はそう言って、俺の後ろに隠れた。
まだ男の人怖いんだよな…
「悠くん、ごめんね。悠くんは悪くない…ね?大丈夫」
こんなことしか言えなかった。
とわを苦しめて、
悠斗に負い目を感じさせて…
俺は完璧には程遠い、欠落した兄貴だった。
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