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遥ー2ー
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ー遥
「あの、先生。今、とわは落ち着いてます…か?」
「今は落ち着いてるけど…ね?遥くん大丈夫かい?」
「はい。と言いたいところですけど、かなりきてます。本当に…」
「何かあったらすぐにナースコールしてね。わかってる?」
「はい」
俺は溜め息をつきながら、ゆっくりと廊下を進む。
もちろん行き先はとわの病室。
後ろに悠斗がくっついて来てるものの、この前のことがあったからか、
「病室には入らない」と言っていて、廊下で待つようだ。
俺は1人でとわの病室に入るんだけど、俺が入ってきた瞬間のとわの表情…
笑顔。
それもほっこりとするような、心からの。
それでも、すぐに毛布に顔をうずめ、「兄貴帰って。嫌いだから」って…
ここで食い下がるとまたとわを苦しめることになるから、
「顔をうずめたままだと苦しくなっちゃうからダメ…な?」それだけいって病室を後にする。
『兄貴』とか、『嫌い』だとか、面と向かって言われるとかなり傷つく。
本当に…
でも、話さないといけないから。
謝らないといけないから…
ちゃんと話せる日なんて来るのだろうか…
今日は話せるといいけれど…
「とわくん、今日も来たよ。おはよ」
「兄貴、何で来るの?毎日毎日」
「うーん…俺はね、とわと話したいんだよ。とわに謝らないといけなくて…」
「謝る?ぼ…俺に?」
毛布からひょっこりと出た顔が可愛い。
それに『僕』と言いそうになったところも…
「いきなり兄貴面してごめんな。
今まで構ってこなかったのに…ね?
勘違いしてて。それでとわを避けててさ…本当ごめん。
自分勝手で最低な兄貴でごめん」
俺は顔をあげられなかった。
とわがどんな顔をしているのか知りたくなくて…
「兄貴、最低だよ。僕、許さない」
ごもっともだ。
本当に最低な兄貴で…
「でも、俺、兄貴のこと好き。兄貴は?俺のこと…好きじゃないんだよね?だから…」
「違う。好きだよ。半年も目を覚ましてくれなくてやっと気づいた。
俺はとわの笑顔に癒やされてて、俺はとわの笑顔が好きなんだ。
だから…俺のこと兄貴として見てくれる?
ちゃんと兄弟でいてくれる?」
「うん。許さないけど、俺、兄貴が好きだから。
ずっと一緒にいたかった。
俺のこと『好き』って言って欲しかった。
構って欲しかった。
兄貴の弟になりたかった」
全て俺が悪かった。
とわの気持ちに気づかなかった俺が。
母親の言動に惑わされていた俺が…
ごめんねとわ。
ありがとう。
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