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桜の下で
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まだまだ上着を手放せない日が続くが、今日はポカポカと春の日差しが心地いい
だから一琉は学食で2人よりはやく昼食を食べ終わると『お皿返してくる』といってそのままふわふわ外へ出ていってしまった
向かう先は昇降口前に咲いている大きな桜の木だ
桜はすぐに花を散らしてしまうし、来週は大雨が続くと予報されているため『花見するなら今週までだよな』となんとなしに言った刻景の言葉を一琉は聞いていた
桜の木の下についた一琉は顔を上げてじーっとその美しさを眺めたり、舞い落ちてくる花びらを連続してとれば願いが叶うと前に教えてもらったことがあって実行してみたり、それが終われば太い幹に寄り添いぎゅううっと抱きついた、というよりは張り付いた
春風が優しく桜の木を揺らしヒラヒラと花びらが一枚一琉の頰に舞い落ちる、それに気づいた一琉はそっと手を伸ばし花びらを取って穏やかに一笑する
その姿は傍目に見てこの地の者とは思えなくて、たまたまその光景を見ていた2人の男子生徒はホゥと息を吐き引き寄せられるようにゆらゆらと一琉に近づいた
それに気づいた一琉はそっと木から離れにこにこと微笑む
「よぉ、こんなとこで何してんだ?」
「あんなー桜見てたんよ!刻景が今週でお終いかもって言ってたから…勿体無いよね」
こんなに綺麗なのにと一琉は残念そうに眉を下げる
「へぇ、おれらも一緒に花見していい?」
「!うん、えーよ!1人で見るのは勿体無いなぁ思ってたんよ!」
六花も刻景も他のみんなも桜の木には見向きもしない
毎年見れるから、わざわざ足を止めなくても視界に入ってくるから、というかここでみなくても桜なんてどこでも咲いてるからと横を通り過ぎて行く
生まれて今まで…春になれば桜は探さずとも視界に映り込み歳を重ねるごとにその感動は薄まっていくのかもしれない
けど一琉にとって桜を見ることはまだ『なれていない』ことで、ここの桜はとびきり立派なので目が離せない
一琉の許可を取った2人はそばによってくるけど2人ももう見慣れた桜になんて興味はなく、それを眺めている一琉にしか興味を向けていない。
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