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「万華鏡の瞳」
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僕の通う高校には有名人がいる。
といっても、特別派手なわけではないし、不良なわけでもない。
ただ単に、1年中サングラスをかけているだけである。
彼は常に一人で過ごし、誰とも関わろうとしないため、誰も彼がサングラスをかけている理由を知らない。
想像できたとしても、目が弱くて強い光が駄目なのかな、とかその程度だろう。
また彼は、サングラスをかけているせいで目元はわからないが、それなりに背も高く、整った顔立ちをしているので、ミステリアスなイケメン(笑)として、女子の間で人気がある。
今日も告白されていたらしい。
しかも、僕の学年で1、2番目に可愛いと言われている女の子に。
しかし、彼女はフラれたらしく、友達に慰められているところを目撃した。
その様子を思い出し、クスクスと笑い肩を震わせる。
「ん……、なに笑ってるの?」
僕の太ももの上に頭をのせて微睡んでいた彼ーーチヒロが声をかけてくる。
「なんでもないよ」
そう言いながら、チヒロの柔らかい髪の毛をすく。
それから、日陰なのを確認してから、そっと彼のサングラスを外す。
すると、その下から不思議な色合いの瞳が現れる。
それは見ている間にもゆらゆらと色を変えていき、一色にとどまらない。
「っつ……!」
苦しそうに瞳が閉じられる。
ゴメン、と呟きながら、額を撫で、まぶたの上に手のひらをおく。
そして尋ねる。
「今日の告白、どうして断ったの?」
答えなんてわかっているクセに、僕はチヒロが告白される度に、そう尋ねる。
一種の習慣のようなものだ。
チヒロは僕の手のひらを少しずらし
口元に薄く笑みを浮かべ
色の変わる瞳で僕の目をまっすぐに見つめながら、
「アキラが好きだから。アキラ以外の人ははいらない」
と言った。
そのいつも通りの答えに、嬉しさと少しの優越感を感じる。
「アキラの手、冷たくて気持ちいいから、もう少しのせといて」
チヒロはそう言って、また瞳を閉じる。
僕は言われた通りにまぶたの上に手をのせる。
そして、その手の上からキスをした。
「おやすみ」
いつもと同じ午後。
日差しを避けた、屋上の影での密会。
誰も知らない、邪魔できない、僕と彼の秘密の時間。
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