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「無条件幸福」
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https://shindanmaker.com/375517
「先輩、留年か浪人してくださいよ」
学校からの指定校推薦が決まりそうだ、もし決まったら来年まで待たずにもっと早くから遊べる、きっと喜んでると思って伝えた言葉の返答が、留年か浪人しろって…
「はぁ?お前何言ってんの」
「おれとしては留年してくれる方が嬉しいんですけど、まぁ浪人でもいいですよ」
訳が分からないことを言われて、頭がズキズキとしてくる。
「なんでそんなこと言うんだ。推薦決まりそうなんだよ。決まったら、クリスマスも正月も一緒に過ごせるし、予備校にも行かなくてよくなるから、放課後も一緒にいられるようになるのに、なんだよそれ」
口から言葉が出るに任せて、一気に吐き出した。喜んでくれると思ったのに、笑ってくれると思ったのに。情けなくなって涙が滲んでくる。
「一緒にいたいのはおれだけかよ」
「そんなわけないでしょ」
興奮してまくし立てた言葉に返ってきた声は、なぜか怒気をはらんでいた。
「じゃあなんで!」
「だって、先輩卒業しちゃうじゃないですか!」
「…は?」
予想外の言葉に勢いが止まる。
「えっ?卒業しちゃうって、そりゃするだろ」
「卒業したら今みたいに会えないし、一緒に昼メシも食べれないし、学校の中で見かけることもなくなるじゃないですか!」
「それに大学に行ったら新しい友達ができて、可愛い女の子とかもいて、合コンとかたくさんあって、俺のことなんてどうでもよくなるんじゃないですか…?」
むすっとした顔を隠すように体操座りをして、小さくなる。
ということは、なんだ。
「もしかしてお前、おれがいなくなったらさみしいの?」
伏せられた顔を覗きこむようにして、視線を合わせる。
「……だったらなんだって言うんですか」
チラッとこちらに投げられた目をよく見れば、うっすらと赤く染まっている。
「だったら、そう言えばいいだろ。ややこしいこと言いやがって」
たまらなくなって、自分より少し大きい体をガバッと抱きしめて、頭をぐしゃぐしゃに撫でまわす。
「ちょっと先輩やめて」
「留年はしないし浪人もする予定はない。大学には行く。だけど、おれの一番はいつだってお前だよ」
ポンポンと背中を叩いてやる。
「…言質とりましたからね」
「おう」
「男に二言は」
「ない」
じゃあ、我慢します。変なこと言ってゴメンナサイ。
ポソリと呟いて、背中に手がまわされる。離されまいとギュッとしがみつくようなその姿に、愛しさがこみ上げる。
あっという間に足の間に座らされて、ガチッとホールドされる。
「来年はお前が受験生だな、頑張れよ」
「先輩まだ終わってないでしょ」
「そうだな」
なんだか可笑しくなって二人してクスクス笑う。
「決まったらお祝いしましょうね」
「おう」
「先輩」
「んー」
「好きです」
「おれも。好きだよ」
「一番って言ってくれて嬉しいです」
そういった顔には見たかった笑顔が浮かんでいた。
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