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「冬の朝」
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冬の朝というのは、寒い。
冬なのだから当たり前ではあるが。
目が覚めてからの数秒間はもう一度寝てしまいたいという誘惑との戦いが繰り広げられる。ただ隣で寝ているはずの人の温もりを探して、あれば二度寝。なければ起きるというのをマイルールにしている。
今日は、ない。
(起きる…起きる…)
ゆっくりと体を起こして、ベッドから脱出する。
きちんと揃えてあるスリッパに足を着地させ、眠気で重い体を引きずるようにしてリビングへと向かう。冬の気配が濃厚な寝室とは違い、扉の向こう側はほどよく暖まっていた。カウンターキッチンの中、多分お湯が沸くのを待っている後ろ姿に思わず笑みがこぼれた。
ペタペタとなるスリッパの音に、気がついているのかいないのか。微動だにしない彼の背後に近づき、くたりと体をもたせかけた。
「…ぉはよ」
「ん、おはよ」
腕組みをしたままなのは寒いからだろうか。一回りかそれ以上小さい体をすっぽり包むように抱きしめる。
自分のものじゃない暖かさに安心した。
「顔洗った?」
「…んー」
「歯みがきは?」
「ん」
「先に着替えてこいよ」
「…」
このまま、ベッドに戻りたい。
愛しい人を胸に抱えて眠る幸福はなにものにも代えがたいなんて、寝ぼけた頭で思う。首を鼻先でするりと撫でると、腕の中の体が微かに強張った。
「あー!もう!」
くるりと器用に体の向きを変えたなーと思っていると、チュッと頬に柔らかいものがあたる。
「口がよかったら、早く用意してきて」
ひそと耳に甘い甘い誘惑が囁かれた。
「りょーかいです」
二度寝の誘惑なんて、かわいい恋人の誘惑に比べたら、手のひらで溶けてしまう雪と同じくらいあっけなく消えてしまった。
髪にキスをひとつ落とすと、ご褒美のキスをもらうために、ペタペタと洗面所へと向かった。
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