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「流石! イケメンの友達はイケメンねぇ!」
「はぁ……どうも」
鏡に映る自分の顔はいつもと同じだ。黒い髪に、黒い瞳、薄めの唇。親に感謝するくらいには整っている、21年間見てきたよく知っている顔だ。
違うのは、丸坊主のオネェなオネェさんが俺の髪を弄くり、服を着せ替え、ご満悦なご様子で俺の隣に立っているってことだ。鏡の向こうに立っている、黒のタキシードを身に纏った己の姿に、ほとほとげんなりする。髪の毛もコテやワックスでセットされ、緩やかなウェーブを描いている。
「波瑠ー! 蒼斗君出来たわよー!」
オネェさんに背中を押され、控え室からスタジオに続く廊下をたたらを踏むように歩いた。
スタジオの入り口まで来るとオネェさんの自信に満ち溢れた声が響き渡った。一斉に視線が集まる。
その中にもちろん波瑠の視線もあるわけで、バチッと視線が絡んだと思ったら、俺のほうに駆け寄ってきた。
……なんだ? なんか一瞬……。
だんだんと距離を詰めてくる波瑠は、微かに黒い雰囲気を纏っているような気がした。実際目の前で立ち止まったその姿は、白いタキシードを着ていて、黒の俺とは対になっていた。
「素がいいから着替えただけで様になっちゃって! 私の出番殆どなかったんだからぁ!」
嬉々と話すオネェさんに波瑠は困ったような笑みを浮かべた。でも何かを発することなく俺の腕を掴んできた。軽く引かれて身体が前にのめりそうになったのを一歩出すことで回避し、それに伴って背中からオネェさんの手が離れたのが分かった。
違和感を持っているのは俺だけなんだろうか。何もなかったように人受けのいい笑顔を浮かべてオネェさんと話している波瑠を、つい凝視してしまう。
ふと、こういうの雑誌企画でも着るんだよなぁと頭に浮かんだ。そう思うとちょっとだけ、本当にちょっとだけ、面白くない。
嫉妬の渦に嵌まりそうになったところで、波瑠が腕を掴んだまま歩き出した。引かれるまま歩いて辿り着くはカメラの前のセット。これがまた俺を後悔させる。
そこには白のサテン生地が掛けられた、ベッドのようなものが鎮座していた。キングサイズくらいありそうだ。
あぁあぁあぁあぁ、綺麗に艶目いてらっしゃること。
口端がひくつくのを抑えられない俺をよそに、波瑠はポスッとそこに腰をおろした。サテン生地が波打つように皺を描いた。波瑠はそんなことには気にも留めず、ゆっくりと俺を見上げて一言。
「おいで」
「っ……」
狡くねーか、それ。
止めの一撃を放ってご満悦な様子に、俺の思考が苛まれる。本当、狡い奴。
それでも、その優しい声音に、暖かな瞳に、愛しそうな表情に、俺は白旗をあげた。
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