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Holy Night
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なんだって、一年の内最も恋人同士が共に過ごす夜をこのオッサンと過ごさなければ鳴らないのだろう。
「メリークリスマス」
「......」
ホテルのスウィートルームで、シャンパンを浴びるように飲む。乾杯などしない。ただひたすら、飲んで飲んで飲みまくる。
「もうちょっと味わいなさいよ、いいやつだよこれ」
「美味しいですよ」
「雅くんなら、少し飲んで味の感想をきちんと言って、俺の酒の説明もよく聞くのに。おまけに......彼の酒の弱さは堪らないよね。ほっぺた赤くして甘えてきてさ」
「俺と雅を同列に考えるのが間違ってるんですよ、まったく......」
目の前で雄弁に語る男は、もう還暦も過ぎたジジイのくせに、俺の息子に本気で惚れているらしい。
「似てないよねぇ。きみには可愛げってものが皆目ない」
「あいつは母親似なんですよ。っていうか、50過ぎたオッサンに可愛いげを求められてもね」
「見てみたかったなぁ、東雲くんの奥さん」
「たとえ生きててもあなたにだけは死んでも見せたくないですがね」
俺の、最愛の妻は、もう10年以上も前に死んだ。それでも、今でも鮮やかに思い出せる。本当に、美しい女性だった。見た目も中身も、所作さえ完璧に美しかった。そして、雅は彼女の生き写しかのように綺麗に美しく成長した。
俺がこんな世界に引っ張ってこなければ、もっと全うな汚れのない人生を歩んでいたことだろう......けれども、この世界に入ったからこそ出会えた存在も多分にある。
「雅くんは、今頃誰といるのかな」
「......弟でしょうね」
「なんだ、家族でクリスマスパーティーだったの?きみを呼んじゃあ悪かったかなあ」
「何言ってんですか、嫌味ですか」
俺の二人の息子は、兄弟同士で恋人関係だった。おかげで、自分の家なのに帰かえりづらいったらない。それもあって、こんな聖なる夜にこの男と過ごす羽目になっている。
「彰吾はロンリークリスマスか、くっくっく。電話でもかけてやろうか」
「成宮は今夜はイベント出演してたはずですよ」
「なんだ、つまらない」
ローストビーフをつまみながら、シャンパンを煽る。
「きみは本当によく飲むねぇ......俺は最近、そろそろ酒が堪えるようになってきたよ」
「さっさと寝たらどうですか」
「まだ9時だよ?さすがにそこまで老いぼれてないさ。先に風呂でも行ってくるよ」
「どーぞご自由に......」
ここのローストビーフは旨かった。
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