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月が綺麗ですね
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星が、空から降ってくるんじゃないか。
そう思えるほど、今、僕達が見ている星空は綺麗だった。
僕の住んでいる町は人が少なく、電気も少ないという理由で、星が綺麗に見える。
でも、昔は人が多かったらしく、今じゃ使われなくなった学校がいくつもあった。
そんな学校に、僕達はいる。
特にこれといった理由もなく、僕達はただ星を見るためにこの使われなくなった学校へ来た。
少し冷たい風が、壊れた窓から落ちない程度に身を乗り出す僕の頬を撫でる。
夏はもう、終わったようだ。
「…綺麗。星が落ちてきそう。…ね、翔太」
壁によしかかり、隣に座っている幼なじみの佳人が、大きな月に照らされて綺麗な銀髪を輝かせながら微笑む。
その綺麗な佳人の髪の毛も、僕は小さい頃から大好きだった。
「……うん、そうだね。僕もちょうど同じこと考えてたよ」
座っている佳人と視線を合わせて、僕らは口角をあげる。
それから少しの沈黙のあと、佳人は窓の側から動かない僕に優しく問いかける。
「翔太、寒くないの?大丈夫?」
「……うーん、ちょっとだけ寒いかな」
僕は小さくそう言い、クスリと笑った。佳人は僕に釣られるように、目を細めて優しく笑う。
「だよね。…さすがにもう十月入っちゃったし。上着持ってこなくても大丈夫かと思ったけど、俺たちの予想は外れたらしい」
「そうだね…。でも、寒くても僕はまだここに居たいよ」
冷たくなった両手に、ふぅ…と息を吹きかけてから僕は佳人を見ながら言う。
「俺もそう思う。だって、こんなに綺麗な星が見れるのに、帰るなんて勿体ないもん」
そう言ってまた笑う無邪気な佳人の笑顔に、心臓がチクリと少し痛くなる。
……僕は、佳人と二人だからって意味で言ったんだけど、やっぱり佳人が気づくわけないか。
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