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何も履いていない股に違和感を覚えながらも、手を合わせていただきますと声に出す。
バターもどうぞと差し出され、普段はつけないけれど塗ることにした。
サラダもトーストも食べられる気がしなくて、少しでも口に運ぶのを先延ばしにしたかった。
「やっぱり、どこにいても真冬は変わらないんだね。人形みたい」
笑いながら、祐介が僕の使い終わったバターに手を伸ばす。
バターナイフですくわれ、塗り広げられたそれはじわじわとトーストに染み込んでいく。
その様が昨日の行為を呼びおこし、更に吐き気が強くなる。
「仕事は行かなくてもいいんですか」
「うん、今日は休みだから。
それに、真冬を監禁しようとしてる手前逃げられたら困るし」
部屋を眺めていたら、九時を指している時計が目に止まった。
さらっと〝 監禁 〟と口にできるあたりが彼が異常者であることを物語っている。
そこでふと気になるのは仕事のことだ。
「僕、夜はお店に行かないと行けません」
「そのことなら、気にしなくていいよ。
君がここにいる間は、俺がその分の金を蓮夜さんに渡すことになっているから」
僕の知らないところで決まったことらしい。
終わりが知らされないこの状態に少しだけ戸惑う。
店に来る時みたいなプレイを毎日のように強要されたら、僕の身が持たない。
どっちみち、金が入るならいいや。
自暴自棄になっている自分に阿呆らしく思いながらも、手に持ったトーストをひたすらに見つめる。
八重島と気まづい時間を過ごさなくていいんだと
考えてから、それ以前にもう会えないのかもしれないと気づいた。
心の中に穴が空いたような、虚無感が僕を襲う。
こんな感情を抱くなんて、やっぱり僕はおかしいみたいだ。
「食べないの?」
心配するような声が聞こえて我に返る。
「食欲がわかなくて」
正直に答えると、食べないと身が持たないよと返された。
一口だけ、耳の方を齧ってみる。
吐きそうになってコーヒーを口に含む。
水分が口の中のかたい耳をふやけさせて余計に飲み込めなくする。
ねとついた固形物が喉につかえながら食道をおりていく。
同じ動作を何度も繰り返しては、吐き気と闘った。
その間もずっと、祐介は僕のことをただ見つめているだけだった。
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