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日曜日は、一点の曇りもない快晴だった。
こんな気分のときでも、世の中はお構い無しに巡り続ける。
俺は今朝、瀬戸と食事に行く日が今日であったことに気づいた。
どこで、いつ待ち合わせだったか。
返事をしたくせに、瀬戸の話を聞いていなかったことを思い出し、そういえばとポケットを探った。
瀬戸が何かを書いて俺に渡したものだ。
小さめに折り畳まれたメモ帳の表には、手渡されたときには気づかなかった、 瀬戸と食事という文字が大きく記されていた。
書き方といい、文字が大きすぎるところといい、瀬戸らしくて思わず笑ってしまった。
中には時刻や場所が丁寧な字で書かれており、俺はそれを頼りに待ち合わせ場所に向かっている。
いつも通っている繁華街の道には、真冬を連想させるものが数多く存在する。
真冬がいた店。
真冬と行ったカレー屋。
真冬と一緒に見た繁華街の街並み。
それらにはなんの罪もないけれど、今はあまり見たくなくて俯く。
彼が、今どこにいるのか、何をしているのか俺には知る由もない。
「八重島さん!」
後ろから、パタパタと駆け寄る足音が聞こえた。
足を止めて振り向くと、瀬戸が手を振りながらこちらに向かって走っていた。
「待ち合わせ場所、通り過ぎていくんですもん。
びっくりしましたよ」
気付かないうちに、行き過ぎていたみたいだ。
ごめんな、と努めて明るく普通に謝る。
最近の俺がおかしいことに、きっと瀬戸は気づいている。
それで、元気づけようと誘ってくれている。
「もうちょい歩いたところにありますから。」
他愛もない会話を交わして、なるべく俺が他のことを考えないように、瀬戸は配慮してくれている。
瀬戸を好きになっていたら。
こんな想いをすることもなかっただろうに。
前と同じことを思った。
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