アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
42
-
自分にまだこんな力が残っていたのか。
息が上がって、脱力しながらもおもった。
気づいたら、目の前で祐介が倒れていた。
意識を失っているのであろう。
息はしているようだった。
あれから何があったのか、よくわからない。
けれど、自分はまだ死なずにすむということは分かった。
死にたいと思わない訳では無いが、勝手に死を選べるほどの自由はない。
拳を握った掌がじんじんと痛んでいた。
無気力感に襲われた身体に鞭打って、服を探すために立ち上がった。
こうなってしまった以上、僕はここにはいられない。
祐介の部屋のクローゼットを開けると、隅の方に僕がここに連れてこられた時に着ていた服が綺麗にたたまれてあるのを見つけた。
他人の服を勝手に着るような真似をしなくてすむので、有難かった。
祐介がいつ起きるかわからない状況にあるにも関わらず、不思議と焦ることはなかった。
何だか、もう二度と祐介とは会わない気がした。
久方ぶりに下着を着て、シャツ以外のものを身につけた。
前まではピッタリだった服が少しだけ大きくなったように感じた。
早くここから出よう。
いつまでも、影に囚われているような気がして寒気がした。
どこか遠くを目指して、僕は部屋を後にする。
どうせ何処にも行けやしないことを知りながら。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
42 / 56