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ガヤガヤと賑わう繁華街の先には、駅がある。
ヨレヨレのスーツに身を包んだサラリーマンや大学のサークルかなにかで集まった大学生たちがそれぞれの集団の中で騒いでいる。
誰がいいのか。
お金がありそうな人。
僕みたいな汚い男娼でも相手にしてくれる人。
条件はいろいろあるけれど、当てはまる人を見つけるのは至難の業だ。
そんなことなら、サイトかなにかで探せばよかった。
そこまで考えてから、自分が携帯を持っていなかったことを再びのように認識する。
解約してから一年くらい経つのに、未だになれない。
視界が歪み、ときどき段差につまづいたり、よろけたりする。
流石に目立つのか、チラチラと道行く人の視線が刺さる。
自分の体力の衰えをひしひしと感じながらも、出来るだけ早く足を動かした。
夕方には、仕事を終えたサラリーマンや学校帰りの高校生の群れが波のように駅へと流れていく。
僕もその流れに沿って進む。
誰一人、見知った顔はいなかった。
八重島がいるなんて、そんなことはない。
無意識に探してしまっている自分に気づいて、視線を下に落とした。
逢いたいとか、そう考えている自分が滑稽だ。
優しくされたから、嬉しかった。
そんな単純な自分が、ひどく馬鹿で哀れに思えた。
感情なんてなくなればいいのに。
「あのっ!」
急に後ろから肩を叩かれ、驚いた拍子にビクリと体が震えた。
走りでもしたのか、相手の呼吸は乱れていた。
恐る恐る、後ろを振り返ってみる。
そこには、息をきらして胸を上下させている八重島が立っていた。
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