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「赤い」
「えっ」
真冬の顔の異常な赤さに、口から声が漏れていた。
きちんと確かめようと、真冬に近づいていく。
「いや、だめっ」
一歩進むと、真冬は慌てたように俺がつめた分後ろへ下がった。
「どうして?」
近くに居るのに触れられないのが嫌で、でも拒否されるのはもっと嫌で。
だから、理由を聞いてみる。
「だって、僕に触ったら八重島さんまでおかしくなっちゃう……そんなのいやっ」
「おかしくなんて、ならない」
先の言葉を遮るように、大丈夫だって安心させられるように、小さな身体を強く抱きしめる。
拒絶されることはなかった。
ドクドクとやけに速い心音。
ハァハァと苦しそうな呼吸。
距離が近いとわかることは沢山ある。
「真冬、熱でてるだろ」
「……出てません。元気です」
「俺ん家、近いから来る?」
「駄目です」
「じゃあ、他にどこ行くの?」
「…………」
真冬は答えない。
「辛くて歩けないだろ。
背中乗って」
負うために、真冬の正面で後ろ向きに屈んで待つ。
道行く人の邪魔になるから、早くしないと。
俺に促され、背中に体重が乗せられた。
「重くないですか?」
「ぜーんぜん」
人ひとり分の体重と体温を感じながら、俺は歩く。
見上げた空は、もう混じりないオレンジではなく紫がかった色だった。
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