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「ついたよ。起きてる?」
マンションの前で背中の真冬に声をかける。
反応なし。
途中で背中の重みが増したときから気づいてはいたけれど、声をかけたり揺すったりしたくらいではびくともしない深い眠りらしい。
そろそろ重みに腕が痛くなってきたんだけど、ここまで来ればあと少しだ。
なんとかポケットから鍵をとりだして、オートロックをあける。
自動で開いていくドアの音に、真冬の肩がビクリと震えた。
起きることはなかったので、そのまま歩き出す。
このまま、勝手に家につれこんでいいものか。
悪いことをしているわけではないはずなのに、少し後ろめたい気分になる。
真冬は確かに〝 駄目です 〟とは言ったが、嫌だとは言っていなかった。
屁理屈を並べながら、歩みは止めない。
そのまま、俺は鍵を開けて真冬と共に部屋に入った。
規則的に寝息をたてる体をそっとベッドに寝かせ、洗ったばかりのタオルを持ってきて額や首元の汗を拭いてやる。
もう春というか初夏に近いのに、やけに厚着な真冬が気になった。
俺がいない間にどこで何をしていたのか。
別に詮索するつもりはない。
真冬が話したくないことを無理に話させようとは思わないから。
気にはなるけど。
部屋、きれいでよかったな。
仕事が忙しかったこともあり、散らかる暇もなかった部屋は割と片付いていた。
真冬もしばらく起きなさそうなので、一息つく。
ずっと逢いたかった存在、真冬が直ぐ側にいる。
熱で上気した頬も、
ときどき苦しそうに歪む顔も、
明らかに速い呼吸も、
今まで見たことのない真冬の姿がここにある。
もう二度と見られないかもしれない。
そう考えたら、自分の唇を真冬の唇に重ねていた。
真冬といると、つい衝動的になってしまう。
多分、真冬の周りにいた人はその想いを留められなかったんだ。
なんとなくだけど、真冬を取り巻く環境について少しだけ理解した気がした。
「いつまでキスしたままなんですか」
唇を柔く食まれて、我にかえる。
赤く充血して潤んだ目が、こちらを見ていた。
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