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その手は、やはりあたたかかった。
妙な安心感に満たされながら、僕は気づいたらベッドの上に寝かされていた。
唇に触れている感触に驚きはしたが、ほかの者にされてる時のような嫌悪感は不思議と感じなかった。
それでも、さすがにずっと口づけられていると息がしにくい。
いつまでキスしたままなんですか。
そう問うと、ビックリしたように離れた唇。
自分の声は掠れていて、刺を含んでいた。
安心感の中にいるのに、不安がつきまとっている。
その内、負の部分ばかりが浮き彫りになり胸の中で渦巻き始める。
子供のようにその不安を八重島にぶつけてしまうんだから、自分はどうしようもない。
怒ってないと告げたときにホッとしたのか、八重島は破顔した。
単純で純粋な彼は、僕と関わることで変わってしまうのか。
心が掻き乱されるかのように揺れ始める。
このままずっと一緒にいたいなんて、叶わない願いに蓋をする。
差し出された薬を睨みながら、口の中にそれを放り込んだ。
独特の苦味と風味を消そうと、片手に持っていた水を嚥下する。
喉にひっかかりながらも下っていく薬の感覚がなかなか消えなかった。
「抱いてください」
自分から離れていく背中を見ていたら、そんなことを口走っていた。
不思議そうな顔をして、歩み寄ってくる八重島。
思わせぶりな態度を見せながら、彼はただ僕を抱きしめるだけだった。
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