アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
1
-
彼は驚くほどに、人間味の無い人だった。
どんな時にも凪いだ瞳で、どこか遠くを見つめていた。
表情も乏しく、感情なんて持ち合わせていないように見えた。
細く華奢な体は儚げで、操り人形のようにどこか違和感のある動き方をしていた。
人であって人でない。
矛盾しているけれど、彼はそんな人物だった。
夜の街の喧騒は、自分という存在をどこか遠くへ消してくれる。
行き交う人々は俺とは無縁の存在であり、大して気にも止めずにすれ違って行く。
ここでは、誰も俺と言う人間を定められたものさしで見る人間などいない。
それが、妙な安心感をもたらす。
ふと、こちらを見ている視線を感じた。
何かと思ってそちらに目を向ける。
何やら如何わしい店前に、息を呑むほど美しい青年がこちらを見て立っていた。
思わず、足が動いた。
青年の方へ向かおうと歩みを早めるが、彼は店内へと入っていってしまう。
気づいたら、躊躇することなく店の中へと進んでいた。
「誰にします?」
声をかけられて、ハッとする。
俺はいつの間にか、ゲイ専門の風俗店に入りこんでいたらしい。
そんな趣味は無いのだが、出るにも出られないし何よりもあの青年のことが気になった。
「じゃあ、この子で。」
丁度、彼だと思われる青年の写真があって指さす。
直ぐに部屋へと案内された。
こんなに簡単なんだと驚くと同時に、何故こんなところに来てしまったのか自分でも疑問に思った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 56