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「そうなんですか」
予想と反して、鈴原は特に気にした様子もなく、荷物を置いて、キッチンで食器やらを出し始める。
「お、怒んねえの?」
「怒りませんよ。先輩が言ったんじゃないですか。もうやめろって」
「そうだけど......」
「それに、教えてくれたってことは、やましいことはないってことでしょ?」
「あたりまえだ」
「じゃあいいです。さ、食べましょう」
そう言って席に着く鈴原。
怒んねえのはいいけど......あっさりしすぎて逆に怖い。
その後は、いつも通りに、飯食って、二人でテレビ見たり宿題をしたりして過ごす。
けど、一つだけいつもと違った。
今日は珍しく鈴原が自分の家に帰ると言ったのだ。
「今日は自分の家で寝ますね」
「え、何で?」
一つの番組が終わったタイミングで、ソファから立ち上がる鈴原に、思わず手を引いてしまう俺。
やはり怒っているんじゃないかと不安になったが、鈴原は優しく俺の頭を撫でてきた。
「いや、たまにはこういう時間も必要かなと思って。先輩、保健室の日から俺といると息苦しそうだし」
「そんなことっ......」
確かに、また怒ったらやだなとか、何で俺の想いが伝わりきらないのかとか考えてたけど、けっして鈴原といるのが嫌だったわけではない。
「俺、ちゃんと我慢できますから。安心してください」
鈴原は、困ったような、何かを我慢しているかのような顔でそう言う。
一緒にいたい。
そのたった一言を言えばいいだけなのに、素直になれない俺は何も言えない。
久しぶりに一人で潜る布団は冷たくて、無性に寂しく感じた。
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