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俺の家.2
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*
「......」
「......」
誠さんの車に乗ること1時間。
初めの方は話しかけてきてた誠さんも静かになり、お互い無言のまま、目的地へたどり着いた。
「......ここっす」
「......うん」
誠さんと住むことになったとき一応連絡はした。その時でさえ面倒臭そうに対応され、今回も初めは来るなと断られた。
相手の人がどうしてもと言ってるからと必死に説得してここに来たけど、俺の足は非常に重たい。けど、早く帰りたい気持ちもあって、俺はインターフォンを押した。
しばらくして開いたドアから出てきたのは、当然叔父さんだ。この家には叔父さんしかいない。
「......ども」
「ふん、相変わらずだな」
「......」
どこからどう見ても俺たちの雰囲気は険悪。その間に割って入って来たのは、頭を深々と下げた誠さんだ。
「初めまして。相沢誠といいます。挨拶が遅れて申し訳ありません」
「ああ、あんたが.......へぇ」
「......?」
意味深な表情を浮かべる叔父さんに誠さんは首を傾げると、叔父さんはすごく嫌な顔で笑う。
「このクズのことだから、どうせ女の家にでもいるんだろうと思ったが、まさか本当に男だったとは。あんたも物好きだな」
「......あ......えっと、涼太くんは非常に優秀な子で是非住み込みで働いていただきたくて......」
「へえ.....同情じゃなくてか?家族がいなくて可哀想なガキを助けてる自分に、酔ってるだけじゃないのか?」
「......っ」
言葉に詰まる誠さんを見ていられなくて、俺は叔父さんにくってかかる。
「おい!いい加減にっ!」
「なんだ涼太?クズはクズらしく黙ってろ。お前がしたこと、ちゃんと覚えてるんだろうな?なんならこの男に聞いてもらうか?」
「っ!てめぇっ......」
「涼太くん」
絶対に言われたくなくて俺が叔父さんに手をあげそうになったとき、静かな声が俺を呼んだ。
「涼太くん駄目だよ。その人は君の叔父さんだ」
俺の方へ一歩踏み出した誠さんが、俺の腕を掴んで下がらせる。そして誠さんは叔父さんの目を見てはっきりと言葉を発した。
「俺の気持ちは同情なんかじゃありません」
「はあ?」
「涼太くんを凄い子だなと思ってはいますけど、可哀想だと思ったことは一度もありません。涼太くんはいつも一生懸命で、仕事のためにたくさん努力が出来る子です。間違った選択をしてしまったこともあるけど、それをしっかり反省できる良い子なんです」
「誠、さん......」
「だから俺は涼太くんを応援したくなりました。この子が立派な大人になれるように、サポートして行きたいと思ったんです。......この選択が正しいのかは分かりません。俺のしていることはただのお節介かもしれない。けど、俺はこの子と、涼太くんと一緒に前を見て歩んで行きたい」
......泣きそうだった。
誠さんが俺を想ってくれているのは知ってたけど、それでも嬉しくて、嬉しくて、もうこの人以外には何を言われても良いってくらい、愛おしい。
俺はこの人が愛おしくて愛おしくてどうしようもない。
「叔父さん」
俺らしくなかったと思う。こんな優しい声で叔父さんのことを呼んだのは初めてだ。
戸惑った様子の叔父さんが俺へ視線を向ける。
「叔父さん。俺の親が迷惑かけてごめんなさい。俺も.......たくさん迷惑かけてごめんなさい。今まで、ありがとうございました」
俺がそう頭を下げると、叔父さんは苦しそうな顔で「二度と来るな」と家の中に入っていった。
もうきっとそうそう会うこともないだろう。
「......」
「帰ろっか」
「......はい」
車に身体を揺すられ、緊張から解放されたからか、眠気が襲ってくる。
「疲れちゃったよね?寝ても良いよ?」
「いや......」
車を運転する横顔を見ながら俺は口を開く。
「叔父さんが言ってた。俺はクズだって」
「涼太くんはクズじゃないよ」
違う。ちゃんと言わなきゃ。
「誠さん、俺は本当に酷いことを叔父さんにしたんです」
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