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出会いと今.4
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家に着くなり、必死に抑えていた感情が抑え切れなくなった。鍵を閉めてすぐ抱きついた俺に、先輩が身じろぐ。
「ちょっ、まだ玄関だろ!」
「無理」
「はあ!?」
まだ、って言ってくれたってことは先輩もそう思ってたってことで。それが堪らなく嬉しい。
「先輩......好きです。大好き。愛してる」
「な、何言ってんだよ。お前なんか今日変だ」
「怖かったんです。先輩に嫌われたらどうしよって......だから今こうしてることが幸せでつい泣いちゃって、ごめんなさい」
「それは、別にいいけど......てか、お前は悪くねえって言ってんだろ。むしろ親父の恩人じゃねえか」
「でも、」
「でもじゃねえ。いい加減にしろ」
どんっと先輩が俺を押して、靴を脱ぐ。
らしくないところを見せて引かれただろうか。それとも幻滅された?そんな怖い想像がはたらいたけれど、先輩が伸ばした手で馬鹿な考えは吹っ飛んだ。
手をたどって視線を先輩の顔に向ける。その顔は、初めて会ったときみたいな仏頂面でなくて少し赤い。けれど、あの時よりもずっと、俺の心に響いた。
「ほら、俺の気が変わんねえうちに、早く来い」
そう言った先輩の手を掴めば、ぐいっと引っ張られる。いつもは可愛い先輩だけど、こういう時はやはりかっこいい。
あの時も今も、先輩はかっこよくて、俺にとって憧れの人。
自分はひどい暴力を受けていたのに、人にはそれを決してしない。
自分は愛情をもらえなかったのに、通りすがりに俺みたいなやつを助けて、不器用ながらも優しくしてくれた。その後も俺はそんな場面を何度か見たことがある。
先輩は女の子に悪いことをしたと自分を責めるかも知れないけど、それでも俺は、あの女の子たちよりも陽先輩の方がずっと誠実だったと思う。上手くいかなかったかもしれないし、確かに泣いた女の子もいると思うけど、先輩は人を愛したいと必死に頑張っていた。
俺はそんな真っ直ぐな先輩が、大好きなんだ。
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