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親友.1
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翔平が高校一年生の時の話です。
*
「えー、マジうけんだけど!」
あの授業が怠いとか、あの先生が怖いとか、あの子が可愛いとか、そんなどうでも良い話にバカみたいに笑うのは嫌いじゃない。
むしろ率先して騒がしいし、周りからはバカ代表みたいな目で見られてる。
けど、それだけじゃないのも事実。俺だって色んな感情を持っていたりするわけで。
「あ、来た」
話していたうちの一人が、ドアの方を指差す。
その指が示すのは、少し茶色がかった頭。つり気味の目は、つまらなそうだけれど、かろうじて開いている。
「あいつ、まーた彼女出来たらしいよ。一昨日別れたばっかなのに。本当いいよなー。顔が良いだけで、女がわらわら寄ってくるなんて」
何も知らない部外者のくせに。なんて、心では思っても口には出さない。そんなことしなくても、いつも騒がしい俺が黙れば、変だと感じるから。
案の定、何かを察知した一人が、不満を漏らしたやつの肩を突く。
「お、おい......翔平いるんだから......」
「あ、そか......わり、翔平」
焦ったように謝ってくるそいつを責めたりなんかしない。いつもみたいにニカッと笑って、俺は大きく頷いた。
「あー、いーのいーの。羨ましいよなー。俺も彼女欲しー!ってことで、ちょっかいかけてくる!」
ガタッと借りてた席を立って、その人の席に向かう。
俺が近づいて来てるって知ってるはずなのに、知らんぷりをするその人に、後ろから思いっきり抱きついてやった。
「おはー!」
そうすれば振り向いてくれる。それが嬉しい。
「ああ?またかよ。お前のクラスはここじゃねえだろ。さっさと戻れ、暇人」
挨拶を返してくれないどころか、可愛くない悪態を吐くのは、親友で幼なじみの陽ちゃんこと、日比谷陽。
小学校からずーっと一緒にいる、俺の大切な人だ。
「いーじゃんか。それより、また彼女出来たって?」
「......なんで知ってんだよ」
「なんで教えてくれないのさ?」
「別に。今日言おうと思ってたし」
ふいっとそっぽを向かれ、俺は陽ちゃんの頬に指を押し当てる。これが案外ふにふにして気持ちが良い。
「ねえ、陽ちゃん。今日、本屋寄りたいんだけど」
「本屋?漫画でも買うのか?」
「いや、弟もう少しで誕生日だから、絵本とかどうかなって」
「ふーん。まあ良いけど」
当たり前のように了承してくれる。
「彼女は?一緒に帰らんくて良いの?」
「あ?別に約束してるわけじゃねえし。つーか、チャイムなるから、さっさと帰れ」
これはまた近々振られるなー。
なんて思いながら、俺は陽ちゃんのクラスを後にした。
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