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俺はため息をついて話を続ける。
「ちげえよ。手紙、隠したの鈴原だろ?」
「あー、気づいてたんですね」
「そんな事するのお前くらいだろ。くだらないことしてんじゃねえよ。返事とか色々しなきゃなんねえんだから」
俺のことを好きだと言ってくれる奴には、ちゃんとけじめをつけておきたい。
今までだって興味はなくても、一応、一人一人真剣に付き合ってはいたんだ。
俺も愛したいと何回も思っていた。
「変なところで律儀だなあ。だって先輩浮気性だから、そうでもしないとすぐ乗り換えるでしょ?」
「俺は一回付き合ったら、自分からは別れない」
「......そうでしたね。じゃあもうしません。てゆうか先輩、今回も俺がすぐ飽きると思ってるんだ?」
立っていた俺は、いきなり鈴原に手を引かれソファに倒れ込む。
「おいっ......ん」
俺の唇にかぶさるのは、もうひとつの唇。
触れるだけですぐに離れて言ったそれは、俺の耳元へ移動する。
「悪いけど俺もう離さないよ?ずっとずっと、陽先輩のこと愛す自信あるし」
「そんなの......」
みんな口だけでは言う。
そんな俺の心を見透かすように、とろけるような声を出す。
「俺だけは本気。本気で愛してる」
こんな言葉信じられない。信じられないはずなのに、涙が出てくる。
涙なんて滅多に出さないのに、こいつの言葉と声を聞くと、なんか駄目だ。
「俺はっ、返せない」
俺の涙の雫を口で吸い上げて、優しい手つきで頭を撫でてくる。
「それでもいいよ。俺がただあげたいだけだから。先輩は俺といてくれるだけでいい」
この時のこいつの顔があの黒笑顔なら、はねのけられたかもしれない。
「俺が先輩を満たしてあげる」
でも今ここにあるのは、とびっきり優しい笑顔だった。
「だから、先輩を俺にちょうだい」
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