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優しすぎる君.1《リクエスト》
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『嫌だ!痛いよ!母さん、嫌だ!!』
『ーーーあんたなんか産まなきゃよかった。何の取り柄もないあんたなんかーーー』
「ーーーーっ!」
勢いよく目覚めると、そこは見なれた寝室。
「あー......最近は見なくなってたのに......」
目にたまった涙をぬぐいながら呟く。
もう何年も前の夢。
母さんが俺に暴力と罵倒を浴びせた頃のはなし。
痛いのよりも、存在否定するような言葉のほうがずっと辛かった。
俺は誰にも愛されないんだってそう思えた。
昨日、鈴原と喧嘩をして(俺が一方的に怒っただけだけど......)意地はって一人で寝たらこのざまだ。
鈴原がいないと安心して眠れないだなんて、本当に嫌になる。
自分があいつに素直になれないたびに思うんだ。
愛想尽かされたらどうしよう、って。
母さんだって最初は優しかったから、これから鈴原に愛想を尽かされたって不思議じゃない。
なんの取り柄もない俺は、心のどこかでいつもそれに怯えている。
「っ......くっ.....ぅう」
涙が出てきて嗚咽を押し殺してると、ドアから光が差した。
「陽先輩、起きてるんですか?え、.......どうしたの......?」
聞こえてきたのは鈴原の驚いたような声。
今の俺を鈴原に見せたくなくて、体育座りをして布団に包まる。
するとすぐにベッドが軋むのを感じた。
「先輩?」
「......出てけ」
布団越しに手の感覚がして思わず低い声で言ってしまう。けれど人が出て行く気配はしなかった。
「昨日のこと、まだ怒ってる?」
「違う......けど出てけ。今は会いたくない」
今の俺はきっと、醜くて、みっともない。そんな姿を鈴原に見られたくなかった。
見られたら嫌われるかもしれない。
どこから湧いてくるのか、そんな負の感情が俺のなかに渦巻く。
このままじゃ、酷い言葉だって言ってしまいかねない。
「......先輩。顔見せて」
「......」
「ねえ、陽先輩」
それでも居座ろうとする鈴原にイライラして、恐れていた通り感情が爆発してしまう。
「出てけって言ってるだろ!!!」
「......」
大声で叫んだ俺に、鈴原は黙りこむ。
やってしまった、そう思った。
呆れられた?それとも、嫌われた?
嫌われたくなくて遠ざけようとしたのに、結局こうなるなんて、本当にどうしようもない。
「うっ......ごめっ......ぅ」
もうどうすれば良いのかわからなくて泣き出すと、優しい声が聞こえた。
「......先輩、大丈夫だから。おいで」
恐る恐る布団から頭を出すと、そこには膝をポンポンと叩いている姿が見える。
「ひっく、......っ、でもっ......っう」
「いいから」
怒っていないのだろうか。そう思ってためらっていると強引に手を引かれる。
膝の上に向かい合うように座らされて見えたのは、怒りや呆れを微塵も感じさせない優しい顔だった。
「っ......うぅっ......おこっ、てっ......ないっ?」
「怒ってないですよ。先輩は悪くないから、大丈夫」
頭を撫でられて、唇で涙を吸われる。
その行為にだんだん心が和らいで行くのを感じた。
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