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昔話.1
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陽がお母さんと過ごした最後の夏の話です。
*
外から聴こえる蝉の声が、頭に響く。
痛い。暑い。お腹すいた。
やっぱり痛い。
けど、そんなことは口が裂けても言えない。
お母さんがまた怒ってしまうから、俺は口をぎゅっと噤んで我慢する。
「何なのよあの男!!」
壁に投げつけられた灰皿が、ガシャンと大きな音を立てた。それに驚き怯え、声を出してしまい、恐る恐る顔を上げる。
お母さんの怒りに満ちた目が、こっちへ向いた。
「何よ」
「あ......や、なんでも、ない」
思わず後ずさろうとするも、すでに壁に背中を預けていた俺に逃げるすべはない。
「何か文句あるわけ!?このクズ!!」
顔を真っ赤にしたお母さんが手を振り上げる。
こうして今日も痛い一日が始まる。
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