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先輩の秘密.1
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*
冬休みのとある昼下がり。
玲と喧嘩して(俺が一方的にキレて)、家から逃げるように誠さんの店に来た。
普段は店でゆっくりさせてもらうけど、今日は定休日だから、二階の家に通された。
俺の目の前には、店特製の美味しいカフェオレと......生意気な後輩。
「陽さんって、何でそんなウブなんすか?前は女の子取っ替え引っ替えだったのに」
「......うるせえ」
変態ドS王子に恥ずかしいことを要求されて、殴って出て来たって、誠さんに相談しに来たら、誠さんは買い出しで居なくて、仕方がないから代わりに立花に話した。
そうしたら、痛いところを突かれて、俺は無視してカフェオレを一口すする。
美味い。
程よい甘みに頬を緩ませるけど、目の前の男が覗き込んできたから、すぐに表情を戻す。
「ねぇー、教えてくださいよー。陽さーん」
「うるせえっつってんだろ」
「えー」
睨んでも睨んでも立花はしつこく聞いてくる。
「ねーねー」
「ちっ。たっく......」
うんざりした俺は、重い口を開いた。
「付き合ってても......そういうことは、したことねえんだよ」
「え?何が?セックス?」
「せっ!?......っ、まあ、そ、そんなかんじ......」
思いもよらない直球な物言いに挙動不審になる俺に、立花は目を丸くする。
「え、もしかしてキスもっすか」
「き、キスはあるけど、けど......」
「けど?」
「ふ、深いのは......あいつが初めてだ」
結構恥ずかしさを我慢して言ってやったのに、立花は呆れた顔を向けてくる。
「はあ?陽さん、それでも男なんすか?」
「う、うるせえ!黙れ!」
気に入らねえ。
お前みたいな節操なしと一緒にすんなって言いたいけど、今のこいつは誠さんだけだからそれも言えない。
「じゃあ、女の子から迫って来たらどうしてたんですか?」
「さりげなくかわしてた」
「......」
今度はジト目。
まさか立花にそんな対応されるなんて、夢にも思っていなかった。
「女の子に恥かかすとかダメっしょ」
「うるせえ!何回もそれで振られてんだよ。つまんねえって。本当に自分のこと好きなのかって。まじで意味わかんねえ」
「いやいや、分かるっしょ」
「分かんねえよ!そんなのしたいって思ったことは、一度もねえ!」
俺がそう言い切ってそっぽを向けば、立花の冷静で的確な言葉が俺を攻撃する。
「今や、あの変態王子と付き合ってるのに」
「......っ」
「今もそういうことしたくないとか思ってんすか?だから毎回喧嘩するの?」
「んなっ......ことないけど......なんか恥ずいし」
「へえー。じゃあ、今は好きなんすね?そういうこと」
「べっ、べつに、そういうわけじゃっ!」
「違うんすか?なら、真希さんとかに言って、怒ってもらえば良いんじゃないすか?玲クンって真希さんに弱いんでしょ?陽さんが直接言えないなら、今度店に来たときに言っとくっすよ」
陽さんには恩があるっすからこれくらいやりますよ。って笑う立花に、俺は瞬発的に頷こうとしたけど、慌てて首を振る。
「べ、別に必要ない。あいつとのは、その......好きじゃなくもないし......したくないわけでもないし」
「それ本当ですか?」
「あ?ああ。だからそう言って......ん?」
後ろから聞こえた明らかに立花とは違う声に、俺は固まる。
目の前の立花は肩を震わせて笑いを堪えているから、多分知っていたのだろう。
「嬉しいなぁ......先輩が本当に嫌がるならやめようと思ったけど、それなら問題ないですよね?」
恐る恐る顔を向けると、苦笑いの誠さんと、......俺が殴ってきた変態が立っていた。
「さあ、帰りましょう。陽先輩」
その笑顔は、もちろん黒笑顔だ。
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