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「......陽ちゃん」
黙り込む俺に、翔平が呼びかけてきた。
その声はなんだか切ない。
「鈴原いなくて寂しいの?」
「え......」
「鈴原のこと好きになっちゃった?」
「な......そんなわけ......」
「じゃあ、嫌い?それとも、興味ない?」
嫌い。
そう言い切れない。
でも、好きだと認めもしない。
どうして答えを出せないのか。
......それは捨てられるのが怖いから。
鈴原はいつでもかっこよくて、優しくて、俺のためにいろんなことをしてくれる。
でも、俺は?
俺は何もしてやれない。
人の愛し方も知らないし、料理だって看病の仕方だってわからない。
わからないことだらけで、何も持っていない俺は、いつか鈴原に愛想を尽かされる。
今までこんなに愛されて、それなのにいつか捨てられてしまったら......そんな思いは二度としたくない。
親父と母さんが頭に浮かぶ。
あんな思い......もう嫌だ。
「......ごめん。意地悪言った」
俺が制服の裾を握りしめて黙っているのを見て、翔平が謝ってくる。
そしてとても辛そうな顔で言う。
「けど、俺は嫌い。陽ちゃんにそんな顔させる鈴原が、心から大嫌いだよ」
翔平が人のことをはっきり嫌いというのは初めてだった。
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