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懺悔
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その夜は、とてつもなく耳鳴りが酷かった。
「…あぁ……っ……うぅ…」
「瑠衣?本当に大丈夫か?」
「うるさい。黙ってて……うっ…ゲホゲホ」
心配した兄さんが声も、それに反応した自分の声さえも、
雑音として全て耳に反響して、その気持ち悪さに戻してしまった。
「ごめん…ぅ…っ……あ…」
補聴器を早々に外し、ソファーでうずくまっていた俺を兄さんは軽々と持ち上げ、
そのままベッドまで運んでくれた。
さっきの言葉で俺の耳鳴りが増幅したことがわかっているのか、終始無言だったけど、
兄さんの優しさを温もりで感じて、俺は泣いてしまった。
兄さんはそんな俺を見て、辛くなったと思ったのか、
勝手に焦りだして、困惑していた。
そんな兄さんはやっぱり可愛いよ。
ふっと笑みがこぼれると同時に、
耳鳴りが激しさを増して、俺はそのまま意識を失った。
ーーー
目が覚めてもなお、耳鳴りは続いていて、
キーンという音に意識が持っていかれていた。
だから兄さんがずっと手を握ってくれていることも、
この部屋に先生がいることも気付かずに、
「兄さん…助けて。
ごめんなさい。兄さん」
そう呟いていた。
「瑠衣、大丈夫。瑠衣は謝らなくていいから」
あれは俺のせいじゃない。
とでも言うように、兄さんは優しく頭を撫でてくれた。
だめ。
だめだよ。
あれは俺のせいなのだから。
俺がお母さんもお父さんも殺したのだから。
ごめんなさい。
耳が聞こえないのは、俺の罪です。
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