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朝
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(おはよう)
兄さんの言葉を、口の動きで理解する。
「おはよう。兄さん」
そのまま洗面所に行って、顔を洗う。
殆ど聞こえない水の音。
左耳は使い物にならないから、右耳だけに補聴器をつける。
「……ん……が…い…」
途切れ途切れで訳わからない。
俺は兄さんに向かい直し、
「何?」
冷たく言った。
兄さんはすまなそうに俺のもとまでやってきて、
耳元に口を近づけた。
「朝ご飯、パンとご飯どっちがいい?」
なんだよ。
そのくらい自分で決めろ。
「どっちでも。ってかこれ邪魔なだけだよね」
この補聴器。
全然聞こえねぇよ。
「はいはい。学校遅れるぞ」
兄さんはいつものように俺の頭をなでる。
まぁ俺がいつも言ってるからな。「使えない」って。
「パンでいいな。焼くよ?」
「ん。いいよ」
俺は普通に上手い朝ご飯を食べ、
兄さんが作ってくれた弁当を持った。
「母さんたちに……わせ…よ」
「分かってる」
今回のは何となく分かった。
母さんたちに手をあわせてから学校行けってことだろ?
言わなくても分かってるって。
両親に手をあわせ、行きたくもない学校に向かう。
あぁ、最悪だ。
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