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「城野、行くぞ」
面倒だから早く済ませたい…
「……のか?……に」
「え?ごめん。なんて?」
城野はえ?って顔。
だって城野との距離1mもねぇもんな…
でも城野下向いてたからさ…?
(いや、やってくれるんだって思っただけ。よろしくって言っても返事なかったし…)
「ごめん…」
2回もよろしくなんて言ってたんだ。
っていうか、なんで左ばっかり立つんだよ。
何言われても聞こえねぇだろ?
「右に立ってくれない?」
「……で」
『なんで』かな?
「左耳聞こえねぇんだよ。右に立って」
俺がそう言うと、やっと右に立ってくれた。
「右耳に付けてるから、左が聞きやすいのかと思ってたよ。
聞こえないなら左耳に付ければいいじゃん」
何度目だろう、この質問。
だから俺は言い飽きたセリフを口にする。
「補聴器付けても聞こえないから付けないの。右耳はかろうじて」
「どの位聞こえるの?あんまり聞こえないんだろ?さっきも…」
この話嫌いだから、早く切り上げたい。
幸い、切り上げる方法は知っているから…
「右耳は75dbくらい。左耳は100db以上かな?」
これを言うと、大抵の人はハテナを浮かべて話をそらす。
「補聴器付けてそれ?不便だろ?」
あぁ、こういうタイプもいた。
知ったかするやつ…
ていうか、こいつ俺のプライバシーにずかずかと。
デリカシー無さ過ぎだろ…
「あぁ、知ったかじゃないよ。
俺さ、死んだばーちゃんが難聴でさ、結構勉強したんだぜ」
「手話もできる」と得意げな城野に、「俺は出来ない」そう言って嗤ってやった。
出来ないのは本当。
手話を覚える前に口の動きで理解できるようになったから。
「みんなは知ってるの?結構悪口も言われてるみたいだけど…」
うるせぇよ。
無視するなってだろ?
「知るか。あいつらは俺がこれで聞いてると思ってんじゃない?」
そう言って補聴器を指差すと、「違うの?」ってあからさまに驚いた。
「この距離じゃねぇと会話出来ねぇからな。普段は見てるよ」
そう。見てる。
音を見てる。
「お前本当すげぇや。あっ席交代しようぜ。右なら聞こえるだろ?」
凄い?
俺、誉められた?
最低な俺を?
両親を殺した俺を?
「お前が話さなければいいだろ?そんなに俺に用がある前提か?」
「冷たいやつ。俺は瑠衣と友達になりたいだけだって」
友達?
なにそれ。
もう訳わかんねぇ…
「知るか。勝手にしろ」
俺は冷たい態度をとることしか出来なかった。
『友達』って何だっけ…
それから適当に校舎をまわり、各自家に帰った。
ここ最近、まともに話したことなんてあったっけ?
『瑠衣』なんて兄さん以外に呼ばれたことなんて…
知らない。
友達なんて。
優しさなんて
知らない。
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