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日常
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「ただいまー」
リビングには誰も居なかった。
あぁそっか、兄さん、今日は仕事で遅れるんだった。
1人なら邪魔なだけだと、俺は補聴器を外して、無造作に机に置いた。
冷蔵庫から適当に野菜をとって切り、豚肉と一緒に炒めた。
面倒だけど、ちゃんとしないと兄さんに怒られるから。
お皿に盛り付けていると、いきなりリビングのドアが開いた。
こういうの、マジでびっくりする。
どうにかならないかな…マジで。
(ごめんね、驚かせて)
兄さんが顔の前で手をあわせながら、俺に近づいてくる。
「別に」
俺はそっけなく返したけど、内心、
(俺が驚いたの気づいたのか?)と兄さんの凄さにまたも驚く。
2人きりでご飯を食べていると、
兄さんがなにか話していた。
面倒だから、俺は気づいていないふり。
でも無音って辛い。
改めてそう思う。
兄さんが悲しそうだったから仕方なく補聴器をつけて
「兄さん何?」
って声をかけた。
そのときの兄さんの顔。
もう25越しているとは思えないくらい、幼い。
なんか可愛い。
「今日いいことあった?顔がワクワクしてる」
「は?何言ってんの?」
「もう少しくらい兄さんに心開いてくれたっていいじゃん」
「お兄ちゃん寂しいよー」だって。
俺は兄さんみたいに幼くないから…
「今週の病院、いい結果でるといいね」
ばっちり聞こえたけど、聞こえないふり。
兄さんは「あれ?聞こえなかった?まぁいいや…」って。
ここ一年、悪くなることはあっても、良くなったことは一度もない。
でも俺の難聴は、心の問題だから。
4年前のトラウマによって、耳が聞こえなくなった。
殆ど可能性はないけど、
いい刺激があれば、もう一度聞こえるかもって。
まぁ、俺は期待していないが。
でも城野の声を聴いてみたい。
なんて、
あぁ、調子狂う。
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