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病院
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「じゃあそこのヘッドホンつけて。
毎回やってるし説明しなくてもいいよね?」
「いいから。早くやりなよ」
俺は補聴器を外して、ヘッドホンをつけた。
検査は単純で、音が聞こえたらボタンを押すというもの。
兄さんは毎回、嫌がる俺に、
「不安にならなくていいよ。ずっとお兄ちゃんがついてるからな」
って優しく言って、俺を送り出す。
今日もそう言われたけど、(俺は子供じゃねぇし)って。
不安でもないし、別に適当に終わらせればいいんだろ?
でも、『聞こえないのが不安で、兄さんの言葉にいつも救われる』
ってのが本音だったりする。
一生兄さんには言わないけど…ね?
(はい。終わり、お疲れ様)
「帰っていいの?」
検査結果の報告があるからだめなのは分かってるけど…
そんなの聴きたくない。見たくない。
「だめ。いつもそうだろ?」
「聞こえない。なんて?」
聞こえてるけど、聞こえないふり。
困ってる先生の顔好きだし…
全部「聞こえない」って先生で遊んでいると、
先生は思い出したように紙とペンを取り出して、『ダメ。帰るな』って大きく書いた。
あーあ。
先生の秘密兵器。
「分かったよ。兄さんと待ってる」
俺が部屋を出ようとすると、先生に名前を呼ばれた。
デカい声だったからちゃんと聞こえて向き直ると、
「今回は期待していいかも。すぐ行くから待ってな」
って荷物をまとめだした。
そんなこと言うなよ。
『期待』持たせんなよ。
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