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最近、何だかおかしい。
他の部屋から掃除機の音が聞こえてくると、胸がキュッとなる。
晩里は他の人にも『罰則』を与えているんだろうか――。
夜10時、カップ麺でも食べようかと思って食堂に下りて行った。
お菓子を含め部屋にある食料は晩里が食堂に持っていってしまったから、小腹が空いたらわざわざ下に行かなければならない。
「あ……」
晩里しか居ないと思っていた食堂では、何度か見かけたことのある1年の寮生が晩里と向かい合ってうどんを啜っていた。
第1寮に優先的に入れる1年生の中にも、第5寮を希望する学生が稀にいる。
体育館との距離を考えると第5寮の方が便利だという理由で、部活組に密かな人気があるのだ。
目の前の1年生も確か運動部だと言っていた。
食堂の入り口で立ち止まっている俺に気付かず2人は何やら楽しそうに話している。
珍しいの。
晩里の顔に笑みが浮かんでいる場面は、物凄くレアだ。
珍しいと感じる一方で何だかモヤッとした感情に包まれる。
俺の前で晩里は基本的に無表情だ。それか怒っているかの2択しかない。
まぁ俺が晩里を怒らせるような事ばかりするから仕方ないんだけど、何だか悔しい。
引っ掛かる事はもう1個あった。
もう10時なのに……。
夕食の提供は9時までとされていて、それ以降は原則学生がコンビニで買って来るなりカップ麺を食べるなりしている。
寮生が夕食を食べ終えて片付けてやっとそれから晩里の夕食タイムだ。
自分の食事をわざわざ1年生に分けてあげる晩里にもモヤモヤする。
そのモヤモヤが一体どこから出てくるのかがわからないから余計に性質が悪い。
飲み物だけは取り上げられずに部屋にあるから、やっぱりこのまま部屋に戻ってジュースで我慢しようと振り向いた。
「望夢!」
聞こえなかった振りをしてこのまま立ち去ろうか一瞬迷ったけど立ち止まってしまったからもう手遅れだ。
「どうしたのですか?」
「……お腹へった」
「先輩もどうですか? 寮長のうどんすっごく美味しいんですよ」
流石は運動部というべきか、ジャージ姿の1年生はスッと立って鍋からうどんをよそってきた。
「どうぞ」
「私は洗濯をしてくるので、洗い物をお願いできますか?」
「はい、寮長」
望夢が腰を下ろすのと入れ替わりに晩里はランドリールームに行ってしまった。
「……美味しい」
讃岐うどんを使った卵あんかけうどんは生姜が効いていて優しい味で、さっきまでのモヤモヤが少しだけほぐれた。
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