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鈴にい-5
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「いただきます」
ユタカが淹れてくれたお茶から漂うハーブのいい香りは、心の表面に芽生えた棘の先を少しだけ持っていってくれた。
「これ、ノンカフェインのハーブティーだから夜遅く飲んでも大丈夫なんですよ」
口の中に広がるペパーミントはガムやキャンディのようなパンチの効いた味わいじゃなくて、まろやかさを宿している。
安眠にもいいというそれは、ガサガサになった心をそっと撫でてくれた。
「寮長、お土産の豚まんまだありますか?」
「ありますよ。蒸しましょうか?」
晩里が冷凍庫から取り出したのは、部活の遠征で大阪に行ったユタカがお土産に買ってきてくれた豚まんだった。
「レンジで蒸すから5分ぐらいで出来ますよ」
5分待つならその間にと、トイレに立って戻ってくると2人はシンクに立って洗い物をしていた。
「おじさん」
「あ?」
晩里の背中からどす黒いオーラが発されるのが見えて、食堂に入ろうと踏み出した足がピタッと動かなくなる。
今の「あ」に付いていた濁点が望夢を1歩後ろに下がらせた。
いつもの晩里らしからぬ空気に姿勢を正したのは望夢だけではなかった。
「ご、ごめん。鈴にい」
「その呼び方は学校ではするなと言ったでしょう」
ピシッと言い放った晩里の腕にユタカが手を掛けたのを見て飛び出したくなるのをグッとこらえる。
「だって、おじさんって言ったら怒るし」
「そりゃあそうでしょう? 私はまだ25ですよ」
四捨五入したら30か~と言ったユタカがとうとうお尻をつねり上げられたのを見て、反射的に吹き出してしまった。
「望夢?」
「先輩!」
同時に振り向いた2人は揃いも揃っておんなじ表情をしていた。
「ご、ごめん」
立ち聞きする気はなかったんだと言い訳を残して、自室へ向かって廊下を全力で駆け抜けた。
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