アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ハンバーグを作ろう-4
-
でも、どっかで見た事があるんだ、あの人。
晩里の所に戻ろうとしてその足がピタリと止まった。
晩里は一人じゃなかったから。
晩里と一緒に居るのは、さっき卵売り場で見掛けた男の人だった。
何か揉めてるみたいだから近付き辛くてちょっと離れた所から様子を伺う。
あ……。
思い出した。
この前第2寮で晩里と一緒に居た人だ。
晩里から力ずくで「無関係」って教え込まれたけど、そんなわけないよ。
男の人は、晩里が手に持った牡丹の花を指差して何か言っているようで晩里の顔が歪んだ。
「お前には関係ない!!」
スーパーに流れていたBGMがちょうど途切れたタイミングだったから、晩里の大きな声は店内に響きわたってしまった。
近くにいたお客さんが何事かと晩里たちを注視する。
「卵持ってきたよ」
変な空気の二人を見ていられなくて、二人の間にあるショッピングカートに卵を入れると不躾な視線が飛んで来る。
あえてそっちを見ないでいると晩里に「望夢、行きましょう」と手首を引っ張られた。
「只今より夕刻の――」
スピーカーからタイムサービスのアナウンスが流れ出して、足を止めていた人たちも次々と動き出した。
「行きますよ」
ショッピングカートを押してスタスタと行ってしまう晩里に遅れをとらないように慌ててついていく。
売り出しの挽き肉は、さっきまで居た野菜コーナーから近い冷蔵ケースに大々と陳列されている。
「肉を選ぶので花を持って貰ってもいいですか?」
「う、うん」
挽き肉のグラムを見ながら、何パックかカゴに入れた晩里はそのまま花を引き取る事なく角を曲がって調味料のコーナーへと足を進めた。
「ソースは何味がいいですか?」
「う~ん、デミグラスソースもいいし、和風もいいし、両方?」
棚に並んでいるソースを見ると片っ端から全部食べてみたくなる。
「あ、俺これがいい!」
ソースのコーナーで目に止まったのは「煮込みハンバーグソース」。
「これは時間がかかりますから……」
「俺、手伝うよ」
二人で作るなら手間も半分になるしと晩里を説得して買ってもらった。
レジで会計を済ませて商品を袋に詰め替える間も、そして寮に帰りつくまで当然のように牡丹の花は俺の手にあった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
79 / 111