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届かない想い-1
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※望夢と晩里が結ばれる前夜の出来事を晩里視点でお送りします
寮生の夕飯が済んでから自分用にと卵あんかけうどんを作ったら、思いの外たっぷりと出来てしまったので、甥っ子のユタカを食堂に呼び寄せた。
「鈴にいがご飯作り過ぎるって珍しいね」
「そうだな」
「おかげで夜食にありつけたからラッキーだけど」
流石夜遅くまで運動部の練習で汗を流しているだけあって、大きな丼に出してやったうどんをおかずに炊飯器白飯を掻き込んでいる。
どうしてうどんを二玉も入れてしまったか。
俺は元来そんなに食べる方ではない。
目の前のユタカみたいに運動でもしていれば、うどんの二玉や三玉ペロッと平らげてしまうんだろうけど。
『うどんを作りすぎてしまったので少し食べに来ませんか?』
元々そう声を掛けたかったのは…。
一つ屋根の下で暮らす寮生の顔がシャボン玉のようにポワンと浮かんで消えた。
末期だな…。
この調子で毎日夕飯を作りすぎてはユタカを召喚して、たんと夜食を食べさせてというローテーションに嵌まってしまいかねない。
ただ一人前多く食事を作るだけだから別に食費も手間もそう掛からないから問題はない…こともなかった。
代わりに夜食を食べさせ続けられるユタカは数ヶ月後には関取への道まっしぐらだ。
何とかしないとな。
「望夢!」
誰も居ないとばかり思っていた廊下から視線を感じて顔を向けると、そこには今まさに脳裏に描いていた姿があって驚愕する。
自分の見ている光景がにわかには信じられず目を2~3度しばたいた。
瞬きしても消えないからこれは幻ではない。
でも何故望夢がここに?!
あ、今ならうどんを食べないかと誘えるかもしれない。
『うどんを作りすぎてしまったので少し食べませんか?』
頭の中で台詞を何度もシミュレーションした成果を試すチャンスだ。
よし、言おう。
そんな俺の決意を無慈悲にも打ち砕いたのはユタカの声だった。
「先輩もどうですか?」
お腹が空いたと言って食堂に入ってきた望夢にユタカがスッと立ち上がってうどんをよそってやっている。
俺が……よそってやりたかったのにな。
実の甥っ子にまで嫉妬するなんて完全に俺はどうにかしている。
あんかけのお陰でまだ少し熱い汁を喉の奥へと流し込むと、洗い物をユタカに任せてランドリールームへと逃げるように駆け込んだ。
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