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マナー
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僕とグレンは料理の並べられた机の横の椅子に向き合って座る。
僕はてっきりハンナも一緒に食事をするのだと思ってたんだけど、家族が待っているからと帰ってしまった。
「いただきます。」
「い、いただきます……。」
グレンの見様見真似で手を合わせてからスプーンを手に取った。
ここに来るまで、僕は今みたいに椅子に座ってゆっくり食事をしたことが無かった。
ママからマナーを教わった事は無かったからだ。
家事の合間に残り物を素手で素早く食べてしまう。
それが普通だと思ってた。
そうしなければその日の食事は無いのだ。
この家に来て初めて食事をした日、グレンには随分と迷惑をかけてしまった。
熱々の料理を素手でつかみ、まるで犬のように口元を汚しながらほおばったのだ。
驚いた様子のグレンに首を傾げるとグレンは優しくマナーについて教えてくれた。
「おい、大丈夫か?…手が赤くなっている。こんなに熱いものを素手で触るなんて、火傷するに決まっているだろう?」
「あ……ぅ、ごめんな、さい………」
「別に怒っている訳じゃないんだが…。」
グレンは困ったように眉を下げ、僕の手の汚れを綺麗に拭き取って綺麗な包帯を巻いてくれる。
「痛いか?」
「痛く、無いです……」
「そうか、なら良かった。」
そう言って僕にスプーンを渡す。
「持てるか?これで食べるんだ。俺の真似をしてみて。」
グレンは自分もスプーンを持って食事を口に運ぶ。
僕も真似してスプーンを口に運んでみる。
「おいしぃ……」
「それはよかった。」
そこで僕は今まで料理を味わって食べた事なんて無かった事に気づいた。
「エディ、すぐに覚えろとは言わないが、食事のマナーは覚えて置いた方がいいだろうと思う。ゆっくりでいいからこれからは俺の真似をして覚えて欲しい。」
僕はコクッと頷いた。
「随分とスプーンの使い方が上手くなったな。」
あれから一生懸命グレンの真似をして、たまに教えて貰ったりしながらグレンとの食事を何度もしてきた。
褒めて貰えたのが嬉しくて、なのに照れくさくて下を向く。
「料理も美味しい。初めて作ったとは思えない。」
そんなに褒められるともう顔が挙げられないくらいに恥ずかしくなってしまった。
「また君の料理が食べてみたいんだが、作ってくれないだろうか。」
「え…また、食べてくれるんですか?」
「当たり前だろう?」
「…ありがとう、ございます。」
これからもっともっと料理が上手になりたい。
グレンに美味しいってもっと言ってもらいたい。
そんなふうに思えた。
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