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山眠る ~プレ1
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1月の下旬、横浜市内の一等地。
空き家の前に15、6歳の少年が一人立っていた。
手に紙切れを持ち、空き家とその紙切れを交互に見比べている。暫くすると少年は納得した顔でその場を後にした。
冷たい風が吹き抜け、少年は手袋をしたままコートのポケットに手を突っ込み肩を竦めながら、こんな寒い日に高校願書を提出しに行かなければならないなんて…と、運の悪さを嘆いた。
「願書なんて郵送すればえぇやん。わざわざ横浜まで行かんでも」
「そないなこと言うてると、当日道に迷って遅刻~、とかなんねんで」
可児家は3月、息子の早生(ハヤセ)が中学を卒業すると同時に大阪から横浜への引越しが決まっていた。
不慣れな土地を案じて、下見がてら一度行った方がいいと母親は提案した。
「遅刻しても合格したるっちゅうねん。そのために偏差値の低い高校選んでんのや」
「いっや、何その余裕。ムカつくわ~、ムカつく~。落ちたらえぇのに。滑ってしまえ」
「それ、保護者の言うセリフとちゃうやろ」
「せやな。そや、家使うか? もう買ってあんで」
「ホンマ? やった。ホテル代浮くやん」
「まだ電気もガスも水道も通ってへんけどな」
「サバイバルやな~って、受験する前に凍死するわ」
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