アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
春の章一 風光る
-
それよりずっと巧い。
遊命は、どんな人が弾いているのか見たくなって脚を速めた。
音楽室が入っている特別教室棟は人気がなく、二階の窓が一つだけ開いていて、音源はそこから放たれているようだった。
遊命は昇降口で靴を脱ぎ、靴下のまま校舎に上がった。
音楽室の入口はピッタリと閉められていたので、遊命は仕方なく飾り窓から中を覗いた。
遊命が覗いた角度からは、ピアノが見えない。
どうしても見たくて、見える場所を見つけようとウロウロしていると、中にいた男が気付き手招きされた。
遊命が躊躇していると男は遊命を指差し、再度おいでおいでをした。
「何やってんの?」
不可解な行動をする綾哉に藍は手を止めて言った。
「…あ、ごめ…」
遊命は演奏の邪魔にならないようそっと戸を引いたが、同時に音が止まり、気まずさから謝罪を口にした。
「誰?」
藍が尋ねた。
「お客さん。藍のピアノにつられて来たんじゃない?」
「す…すみません。邪魔するつもりはなかったんだけど、先生が手招きしてたから入っていいんだと思って」
「…先生?」
藍と綾哉は顔を見合わせた。
「…先生って、俺?」
「ぷっ…はははっ、こいつは先生じゃないよ。こいつは…」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
19 / 115