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春の章二 霾(つちふる)
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「藍ちゃんの主観でいいからさ」
「…う~ん」
「いいから吐け」
「…吐けって…そうだなぁ、取りあえず、俺は可児に謝らなきゃいけないってことなんだけど」
「それは分かってるよ。怒ってたからな」
「その訳が…」
突然、入口の戸が引かれ、昨日の場面が蘇ったが、入ってきたのは中年の男だった。
璃青は咄嗟にピアノに身を隠し、藍は口をつぐんだ。
「おい、おまえらもう帰れ」
「はーい」
「午後から会議だから居残んなよ」
「すぐ出ます」
素直に返答すると、男はパタパタとスリッパの音をたてて遠ざかっていった。
「あー…、びっくりしたぁ」
璃青が胸を押さえながら、大きな息をついてピアノの影から出てきた。
またしても理由を聞き出せなかった遊命は、不機嫌な表情で音楽室を出ていこうとした。
「うち来る?」
「え?」
「うちで続き話そうか?」
「…うん。りぃは帰れよ」
「えーっ!?」
「何がえーっだ。おまえは部外者。一ミリも関わるな」
「ちっ」
「ちっじゃねぇ。興味ないくせに」
「はいはい、帰りますよ。じゃね、藍ちゃん」
「藍ちゃんて言うな」
廊下から明るい声で、またねーと返ってきた。遊命は眉間に皺を寄せ、鼻息を荒くした。
「…遊命もね。藍ちゃんはないわー」
藍が遊命の横で呟いた。今までスルーしていたが、意外に気にしていたようだった。
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