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夏の章一 青嵐(あおあらし)
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「危害が及ぶなら、俺じゃなくて、まず、あややだよ」
「…誰?」
「もう一人、音楽室にいたじゃん」
「おったか?」
二人は、どちらからともなく歩き出した。
ストーカーの問題は、何一つ解決していない。
それでも、自分が標的になること(それはそれで問題だし、心配だが)も顧みない遊命の言葉に、力強い味方を得た気がして、共に闘ってくれる気がして、心が軽くなった。
それと、もう一つ。ゲイである自分を、受け入れてくれた。
可児の中の鬱々とした気分が嘘のように晴れていた。
「いたよ。藍ちゃんのセフレだって」
「…は…、やり過ぎてとち狂ったらえぇねん」
遊命は可児の表情を見て、本当に藍のことが嫌いなんだな、と思った。
「…つか、そいつにも何かされたん?」
「耳舐められた。後ろ手に手首掴まれて」
「…」
「何だよ。訊いたから、答えたのに」
「遊命に怒ってんのとちゃう」
「あややに怒ってんの? 俺、藍ちゃんとエッチしたよ? それは怒ってねぇの?」
「二回も言わんでえぇっちゅうねん。藤沢は元々嫌いや。今更嫌いの上塗りしたところで、どーってことないわ。気分のえぇ話やないけど、『最初』より『最高』の方が大事やろ。俺、処女信仰とちゃうし」
「…処女? 俺?」
「あほやねんから、深く考えんなや」
「あほ言うな」
もと来た廊下に戻ると、正面から担任が、早く入れと手で扇ぎながら歩いてきていた。
「おまえら揃って常習犯だな。学校で変なことするなよ」
「二回ぐらいで、やいやい言うなや。変なことって具体的に何やねん」
「いいから、早く入れ。テスト返すぞ」
可児にとって結果の分かりきったテストを返すと言われても、何の動揺も期待も無かった。
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