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夏の章三 夏ぐれ
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「遊命、ドア引いてや」
「ん? あぁ」
両手が塞がる可児の代わりに、遊命がバスルームのドアを引いた。
廊下と変わらない、それ以上にむっとした空気に包まれる。
浴室のドアも同様に遊命が開け、可児はタイル張りの床に遊命を寝かせた。
「身体横向きにして、丸まって」
「……こう?」
「ん。そのまま、ちょっと待っててや」
「……ん」
可児は遊命を残し、バスルームから出ていった。
タイル張りの床は、思いの外冷たかった。
夏の最中に冷たく感じられるほど、身体が熱っている。発熱しているのかと思うような気だるさもある。
(発熱ってことはないか……可児も熱かったし)
遊命は『ん』の字に身体を曲げ、緩やかに熱が奪われていく気持ちよさに目を瞑った。
可児の身体から伝わる熱や、汗で湿った肌の感触を思い起こす。生きているからこそ得られる些細な変化を、遊命は愛しいと感じていた。
こんなときに……と冷めていく身体と相成って冷静になる頭で、可児の行いを顧みた。
可児が元々面倒見がいいのは分かっていたが、レイプ紛いの行為をした相手に、なぜこんな煩わしいことをするのか。
普通に後始末のつもりか。
本気で後悔していて、全てを洗い流したいのか。
帰ってくる母親に、見られたくないからか。
彼の心の変化が、遊命には分からなかった。
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