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夏の章三 夏ぐれ
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「抱っこしてこか?」
「いや、それはまずい。何事かと思われるじゃん」
「…せやな」
遊命が可児の肩を引き寄せ、弱々しく足を踏み出す。
おぼつかない足取りに、可児は遊命の腰を支え、歩調を合わせた。
リビングでは大人三人が、談笑するでもなく、かといって神妙な面持ちで話し込んでる訳でもなく、ただ何かを待っているようだった。
「何や、調子悪いんか?」
日出子が、リビングに入るなり声をかけた。
「うん、ちょっとな。何? 俺達待ってたん?」
「そぉや。あんたらの話やもん」
「俺達の?」
予想外の言葉に、胸がドクンと不安な音をたてる。
可児は遊命をソファに座らせるとキッチンに向かった。
「長谷川さん、概ねの話は聞いてますけど、本人の前で一から話していただけますか?」
『長谷川さん』と呼ばれた青年は、日出子の申し出に応えず、堅く俯いたまま、テーブルの一点を見つめていた。
真一文字に結んだ口の端に緊張が窺える。
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