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夏の章三 夏ぐれ
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「何で、俺の名前知ってん?」
長谷川が、俯いたまま話し始めた。
「……た…多分、俺のことを覚えていないと思いますが、保健施設でHIV検査の告知をしたのは俺です」
「……え?」
長谷川は、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「…き…君に嘘の告知をしました」
「……」
テーブルの上で組んでいた、長谷川の手がカタカタと震え出す。
声も無理に押し出そうとしているのか、低くくぐもっている。
「き…君は…プ…プラスじゃない」
「は?」
「…マ…マイナス…陰性です」
「え…ちょ…ちょっと待って、何言うてんの?!」
唐突に間違いでしたと言われたところで、はいそうですかとなるはずもなく、可児は混乱していた。
「どういうことや!?」
安堵より怒りが込み上げる。
長谷川に詰め寄ろうと、立ち上がった時、遊命が可児の腕を引いた。
軽く首を振って、取りあえず話を聞こう、と可児を止めた。
「せやけどなぁ」
「可児」
可児を引く手が強くなる。
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